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恋の迷宮?

[294]  超ナタデココ  2006-07-03投稿
「あ!学校だ」
夏美が暗がりの中見えてきた学校を指差す。
それでも2人はゆっくり歩いていく。
相も変わらない沈黙。

途中まで進むと、冬樹は足を止め、自転車を反対方向に向けた。
「家あっちなの?」
夏美の問い。
冬樹は、気まずい――あるいは、バツの悪い表情――を浮かべた。
「あぁ。
 ……よ、よかったじゃねぇか、俺家逆だからなお別れかな」
冬樹は、そう言ってしまうと、自転車に乗ろうとする。
けれど、その行為は耳に響いてきた言葉に遮られる。
「わ…私抜け出せない」
夏美の言葉に、冬樹は視線を彼女の方に向ける。
夏美は多少俯き加減で冬樹の事を見ていた。
いな、見つめていた。
「え?」
「あたし!恋の迷宮から抜け出せないよ!
 冬樹くんとずっとずっと一緒にいたいよ!!」
夏美が叫んでしまうと声をあげて泣きだした。
雨は、相変わらず降り続けてるし、その音は響き続けた。
けれども、彼女の言葉は余すことなく冬樹の耳に届く。
そして、冬樹はそっと夏美を抱きそめた。
「大丈夫さ、恋の迷宮にゴールなんてありやしない。
 ただ、あるのは君を夢の世界に誘う扉さ」
「夢の……世界?」
夏美は震える声で言う。
頷いて見せ、冬樹ははにかんだ笑みを浮かべる。
「そう!さぁ扉をひらいてごらん。」
雨のようにこぼれる涙を、ゴシゴシとぬぐう。
そして、顔を上げ冬樹を見る。
「あ、あれ冬樹くんしか見えないよぉ」
「そう!俺こそが夢の世界さ。」
「ステキ……」

感想

  • 1934: 甘いイイ作品ですね? [2011-01-16]

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