DREAD 『天国からの誘惑』
画家のフランク・サリバンが58年の生涯を終えた。今、彼の遺体を納めている棺が埋葬されようとしている。
司祭が祈りの言葉を唱え、遺族の方々は皆悲しみの表情を浮かべ、涙が止まらない者がほとんどであった。
「ああ…フランク…」
妻のリビーがハンカチで止まらない涙を拭いながら呟く。ついに司祭は祈りの言葉を唱え終え、棺に土がかけられていく…遺族の方々はその光景を悲痛な眼差しで見ていた‥どんどん積もっていく土‥ だが、棺全体が土に沈みかけている時に妻のリビーが叫ぶ。
「待って!よく見て!」
棺に指をさしながらリビーが言うと、遺族の方々の視線は皆、棺に注がれた。
すると、棺が小刻みに揺れているのが目に入る。その小刻みの揺れはどんどん勢いを増していった。それを見て、遺族の表情は悲しみから驚きの表情へと変わっていく。そしてついに棺の蓋はこじ開けられ、上体を起こすフランクが姿を現した‥
「フランク、あなたは本当に運が良いわね」
妻のリビーが久しぶりに自宅へと戻ってきたフランクに微笑みながら言った。
だが、フランクは生き返ってからというものの完全に元気を無くし、意気消沈している。そんな彼にリビーは
「ねぇ、どうしたの?あなたは生き返ったのよ。元気出して」
すると無表情のフランクはゆっくりと話し出す。
「リビー‥何で俺は生き返ってしまったんだ‥何でこんな腐った世の中にいなきゃ行けないんだ‥ああ…もう一度、もう一度あの場所へ行きたい‥あの場所へ‥」
完全にかつての明るい性格を失っているフランク‥リビーがフランクの言うあの場所について質問する。
「あの場所って?」
するとフランクは画用紙と鉛筆を手に取り、話し出した。
「素晴らしい場所だ。こんな世界よりずっとな‥何もかもが自由だ。苦しみなんて何処にもない。」
フランクは画用紙に描いた絵をリビーに見せた。画用紙に描かれた絵を見つめながらリビーは言う。
「良い場所ね。素敵だわ」
するといつの間にかフランクは立ち上がり棚の引き出しから何やら取り出す…リビーはすぐ分かった…その取り出したものが拳銃だということを‥
「フランク!あなた正気なの!」
リビーが必死に言うが、フランクは関係なく銃口をこめかみにあてる‥
「‥俺はもうたくさんだ‥こんな狂った世界にいるのは‥リビー‥さよならだ」
それが彼の最後の言葉だった…
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