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恋の滑走路?

[363]  超ナタデココ  2006-07-03投稿
その明希が、どういうわけか更衣中。
一瞬、お互い固まった。
「キャァ!」
晴輝は慌てて部室を出てドアを閉める。
悲鳴を上げたいのはこちらだ、小さく心の中で毒づく。
念のため、ドアの上を見上げる。
そこに掲げられているのは男子陸上の文字。
――決して、俺が入り間違えたんじゃない。
俺は正しい、うん、絶対。
「何で男子部室にいるんだよぉ……」
晴輝は狼狽した声で言う。
急に気分が変動したこと云々で、心臓がバクバクと鳴っている。
いつまでも心臓を太鼓のように叩いている体を落ち着かせるため、深呼吸。
それから、部室のドアに背中を預ける。
特に意味はないが、見る気はないというアピール。
「だってぇ女子部室開いてないもん。」
しょうがないじゃん、といった感じの返事。
「だからって……」
せめて鍵くらいかけて置けよ、と言ってみるも無反応。
更に、お前は本当に女子高生か、と言いかけて口を閉じる。
さすがに言い過ぎると、痛いしっぺ返しがある。
明希の右ストレート恐ろしさは、身をもって理解していた。

「私ぃ、晴輝には別に見られてもいいよ?」
そんな中、唐突に聞こえてきた声。
「えっ、まぢ?」
嗚呼、ようやく、落ち着いたというのに。
けれども、返ってきたのは陽気な笑い声。
「ハハハ、今ドキッとしたでしょ??」
「し…してねぇよ!」
即答してから、晴輝はため息をついた。
キャプテンである自分をからかえるのはこいつくらいだ。
ただ、未だに自分をからかってくれる彼女は、貴重な存在でもあって。
「あれれぇ?ムキになっちゃバレバレだよ。」
未だ、笑っているのかそんな声。
溜息の数だけ寿命が縮むとか言う噂もあるが、今日はどれだけ寿命を縮めてるんだろ
う。
そんなことを考えながら、そっとドアの奥に視線を向ける。
「そんなんじゃねぇよ……ってか、もうそろそろいい?」

「……」

陽気な声が返ってくると思ったが、結果は真逆。
しん、としていて、音が全く返ってこない。
聞き逃したのか、ともう一度声をかけてみる。
「明希、入るぞ?」
無音。
「おい!明希どおした!?」
沈黙。
「明希!」
静寂。
慌てて、晴輝は部室の中に飛び込む。
――何があった?
しかし、見回してみても部室の中には誰も見当たらない。

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