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○●純+粋な恋●?

[457]  沖田 穂波  2009-01-30投稿

4-? 夏の訪問者

『ただの風邪にしては随分長引きますね?』

粋乃は純に尋ねた。
純はこの前見舞いに来た粋乃達に,ただの風邪だと言っていたのだ。

『それにお痩せになりましたわ。』

純の目を粋乃は真っ直ぐに見た。純は心の中を見透かされているような気がして顔を背けた。

『本当の事を,話して下さい。』

不思議な静けさが辺りを包む。
夏の午後は,こんなに静かだっただろうか。

『私は‥』

純は重い口を開いた。

『私は,もうじきに死にます。』

呟く様に言ったが,粋乃にはそれがはっきりと聞こえた。

『死ぬ‥どうして?』

『死んだ母と,同じ病なんです。病だと気付いた時には,私にはもう,死ぬ道しか残されていなかった。』

『嫌だ!!』

粋乃は突然泣き出した。

『嫌です!!あなただけなんです,私を理解してくれたのは!』

粋乃の目から大粒の涙が落ちる。

『私,あなたと出会ったあの場所に何度も行きました。でもあなたは来ない。いつしか,あなたと出会ったあの日の事は,全て幻だったのではないかと思えて来たのです!』

純の胸が締め付けられた。自分はあれから一度も桜並木へ行っていない。
いくら病に倒れていたとは言え,申し訳が無いことをしたと,心から思った。

『あなたが全て幻だったのだと考えたら,この世界が,とても残酷に見えてきたんです。私はあなたの居ない世界で,
生きてゆく自信がありません!』

粋乃は両手を顔に当てて泣いた。
純は,しばらく黙っていたがやがて粋乃の手を取り,そっと自分の手を重ね言った。

『私は,
 ここに居ますよ』

粋乃は涙で濡れた目で純を見た。

『いずれは死んで消えてしまうけど,それまで粋乃さんの世界に居続けます。だから,世界が残酷だなんて,言わないで下さい。』

粋乃は純と重ねられた手を見つめた。暖かい。


『好きです‥あなたが。ずいぶん昔から。』

震えた小さな声だった。

『ぇ‥?』

純は粋乃の意外な言葉に顔が熱くなるのが分かった。

●○続く○●

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