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恋の滑走路?

[347]  超ナタデココ  2006-07-03投稿
明希の瞳から絶えることなく涙が零れ落ちていく。
そっと、彼女を抱き締める腕に力を込める。
「だからひたすらゴールを目指した、明希を目指した、誰よりも速く…速く……。
 でもさ…ゴールする度に気付いた、こんぐらいじゃ追いつけねぇまだ先がある、っ
て。
 ……明希にいつも気付かされてた……だから、だから!
 俺が明希に追いつくまで……明希こそ…どこにも行かないでくれ!」
「………ぅん………待ってる、絶対だからね…
 でも走ってるときは晴輝一人じゃないよ!
 私もいる!みんなもいる!私の心はいつでも晴輝に預ける」
明希はポロポロと流れていく涙をぬぐいながら顔を上げた。
「…男だからさ死ぬまで…いや…死んでも約束は守らなきゃいけねぇ…。
 だから俺は誓いをたてる!俺の前には誰も走らせねぇ!1番に明希を迎えにいって
やる!」
「ゴールしたら………………………そのときは…手ぇつないで一緒に走ろ!
 …今度こそは握り締めて離さないんだから!!」
絶対に、小さく呟く。
それから決意を胸に押し込むように、頷いた。
明希はじっと晴輝の顔を見つめる。笑っている、彼が目に入ってくる。
「あぁ、明希は誰にも渡さねぇ!」
「ぅん、晴輝は私のもの!」

数週間後――
「男子200メートル準決勝5組の選手を紹介します、第1レーン、1217番、幹元 晴輝君、黒崎高校。」
全国大会の会場で、彼の名前が高らかに呼び上げられる。
彼は、本部席に一礼をして、スタートラインにたった。
わっと、観客席から歓声が上がる。その席の一つに、彼女はいた。
「晴輝頑張れぇっ!!」
声が届いたのかどうかは定かではないが、彼は確かに彼女の方を向いた。
後の談ではあるが、このとき二人は確かに目を合わせたらしい。
――位置について
心臓が、鼓動する。
――ヨーイ…
バンッ、と号砲が響き、各選手が一斉に走り出す。
陸上を始めたあの日と同じ、なんら変わらぬ号砲を聞きながら、彼はしっかりと見据
えていた。
ゴールと、その先にいる彼女の姿を。

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