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奈央と出会えたから。<315>

[567]  麻呂  2009-02-01投稿

屋上のドアを開けると、



心地よい風が勢いよく、あたしの前を通り過ぎて行った。



まだ6月に入ったばかり。



北海道の夏は、まだまだ遠い。



ミズホさんとサトル君が、この春に卒業してからは、



聖人は、よく屋上へ行っていた。



『聖人。』



そこには、



頭の後ろで手を組んで、仰向けに寝ている聖人の姿があった。



『おぅ。奈央もこっち来いよ。

風がすげぇ気持ちいいぜ。』



あたしの姿に気付いた聖人は、笑顔でこちらを見ている。



『うん。今行くっっ。』



あたしは聖人の側まで駆け寄ると、その場にゆっくりと腰を下ろした。



『ピンクの水玉模様。』



『えっっ?!』



『ぱ・ん・つ。』



『ば、ばかっっ!!何言ってんのっっ/////』



心配してたのに。



聖人の様子が変だったから。



でも、



いつも通りの聖人だ。



よかった。



『奈央も寝そべってみろよ。』



『う、うん。』



ひゃあっっ/////



聖人に寄り添うカタチで、



あたしは、言われるがまま寝そべってみた。



ドキッ――



『ホントだ。風が気持ちいい‥‥。』



『だろ?!ここって用務員のオヤジが、夕方、鍵を掛けに来るトキ以外に誰も来ねぇじゃん?!

だから、寝るには最高の場所だぜ。』



『あはは。そうだね。』



こんな穴場スポットがあったなんて。



全然気付かなかった。



『ところで奈央、出る種目は決まったの?!』



『ううん。まだそんなの決まってないよ。だって、あたし、教室を抜け出して来たんだもん。』



『大丈夫かよ?!

変な種目、押し付けられんなよ?!』



『あはっっ。あたしの代わりに、ユカがくじ引いてくれてるから大丈夫。』



『マジ?!でも、くじ引きなら何が当たるか分かんねぇじゃん。』



『それは、そうだけど。』



『ま、頑張れよ。俺は出れねーケドよ。』



『うん。ありがと。』



ふと見た、すぐ横のあなたの表情が、



とても悲しそうに見えた。

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