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奈央と出会えたから。<316>

[564]  麻呂  2009-02-01投稿

『俺さ、小さい頃、すげぇ泣き虫でさ。』



『あはっ。そうだったんだ?!』



『一緒に入院してた、俺と同い年の女のコが、ある日手術を目前にして死んじゃったんだ。』



『うん。』



『俺、すげぇショックでさ、毎日泣いてばかりいた。

でも、毎日毎日泣いてたら、ある日親父に“男は強くならなきゃ駄目だ”って言われてさ。

俺が毎日泣いてばかりいたら、その死んじまった女のコが、安心して天国へ行けないって。

そう言われて、その日から俺は心に決めたんだ。

もう泣かない。強くなるんだって。』



『うん。』



『それからは、“死”に対しての恐怖心が、俺から消えた。
俺もいつかは、あのコと同じ様に死ぬんだって、

どこか開き直って生きてきた。』



『うん。』



『でも、今は違う。
自分の体を大事にしなきゃって思うようになった。

そうじゃないとさ――』



『うん。』



『オマエのコト、守れねーじゃん。』



あなたのその言葉に、



胸がキュンと痛くなった。



今のあなたの姿からは、



とても想像出来なかったよ。



それほどまで、



あなたは強くて、



カッコよくて、



頼りがいがあって、


いつだって、



ヒーローだったよね――





『やべー。俺何しんみり語ってんだろな?!ごめん奈央。

そろそろ教室戻ろうぜ。』



『あたし、今の聖人の小さい頃の話、聞けてよかったよ。

聖人のコト、またひとつ知るコトが出来て、凄く嬉しいもん。』



屋上から出るトキ、


聖人は、優しくあたしの手を引いてくれた。



そして、



『教室へ戻る前に♪』



『/////』





どんな言葉よりも、


何よりも、



安心するんだ――



甘いキスをされる瞬間が。



すごく幸せって思える、



この瞬間が。



ねぇ聖人。



あたし達、



これからも、



ずっと一緒に歩いて行けるよね?!



まだ、



始まったばかりの、


長い長いこの道を。




あなたとともに――

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