PRICE?
「さてと、このスイカはどうするかな。2個あっても仕方ないし、実家に送るか。」
…親父、お袋、元気ですか?久しぶりですね。知り合いからスイカを貰ったので送ります。こっちは元気でなんとかやってます。
「なんだ、ケースケからか。なんて書いてあるんだ?」
「知り合いからスイカを頂いたみたいよ。まあ、なんて素敵なスイカなんでしょう。」
「あいつも気が利くようになったな。さすがはオレの子だ。」
「自慢の息子ですね。2人だけじゃ食べられないからお隣にもおすそ分けしましょう。」
「…ちくしょう。送料で1000円も使ってしまった。まあ、2日分の食事代と思えば安いもんかな。」
「…しかし、スイカだけっていうのも飽きてきたな。さすがに腹にたまらねぇし。」
「面倒くさいけどまた探すか。」
ケースケはまた、いい仕事が無いか町を歩き始めた。
…なにかありそうな河川敷
…人が沢山いる市街地
…登山客が多い山の麓
…しかしどこに行っても、仕事が見つかるはずはなかった。
「今日は仕事探しはやめて帰るか。もう日も暮れたしな。」
「しかしたまにはいいもんだな。こうやって1日中歩くっていうのも。外にいる間は電気代とかもかからないし、ちょっとした節約だ。」
ケースケは早くなった夕暮れに急かされるように、足早に帰途についた。
時折、木々の間から覗く夕焼けが妙に赤く感じた。
ガチャ
「なんだ、またピザのチラシか、食べたくても金が無いから仕方ないだろ。」
「…ん?封筒があるぞ。なんだ?」
…ケースケ、スイカを送ってくれてありがとう。近所の方達にもおすそ分けして美味しくいただきました。元気でやっているみたいで安心しました。
近所の方がケースケにお礼を、とおっしゃってお金を渡されたので入れておきます。
たまには家に帰ってきて元気な顔を見せてね。
「…え?5千円も入ってるし。こんなにもらっていいのかよ。」
「なんか悪いなぁ…。」
少し冷えだしていた体が温かくなるのを感じたのと同時に、懐かしいあの日のことを思い出した。
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