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○●純+粋な恋●21

[444]  沖田 穂波  2009-02-03投稿

5-? 初秋の桜

『私ですか!?』

純は驚いた。
粋乃の話が記憶に無かったからだ。
と言うか純の幼い頃の記憶は殆ど書道の事で埋もれていた。

『そうです。
あれからの私は不思議でした。たった一度しか会った事のない男の子の事を,12年間想い続けたのですから。』

『そう‥だったんですか気付きませんでした。』

純は幼い頃の自分に損をした気がした。

『私は,幼い頃の粋乃さんを知らないから,とても悔しいです。ずるいなぁ,粋乃さんは。』

粋乃は笑った。

『でも,こうして今純さんの隣に居ます。
純さんは,今の私を知ってくれれば良いんです』

純は,粋乃を見て微笑んだ。

『そうですね,
粋乃さんはきっと昔の時のまま変わっていないだろうから。』

『まぁ酷い。
しかし,それもそうかもしれません。』

粋乃は笑った。
周りの空気がぱっと明るくなる。

今の純は,粋乃が笑うだけで幸せだった。
この幸せがもうじき消えるのだと思うと,目の前が真っ暗になる。
純はこの幸せを深く心に刻むように,
そっと目を閉じた。


●○続く○●

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