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ロストクロニクル7―5

[414]  五十嵐時  2009-02-04投稿
パールを起こしたのはタクトだった。
「パール!逃げるんだ」
タクトが事情を説明する前にパールはタクトの切羽詰まった様子を見るや否や、さっと起き上がった。
「なに?どうしたの?」
パールが急いで事情を聞こうとした時。
「起きたのなら火を放ちますよー」
フラットが不意にこの広大な草原に火を放ち始めた。
「何してるの!」
「後で説明するから、今は早く逃げるんだ!」
タクトとウェドは既に二人で並んで火から反対方向へと駆け出していた。
「ちょっと待って」
パールも二人を追いかけるように駆け出した。
二人はパールを気遣って少し遅く走ってくれていた。
「フラットはどうするの?」
パールは二人に追いつくとすぐに訊いた。
「大丈夫。フラットは炎を操る魔導師だ。あれくらいの炎はなんともないさ」
「それって本人に訊いたの?」
「いいや」
「大丈夫に決まってるだろ。魔導石の炎でもあの体は耐えたんだぞ」
パールはしばらく考えた。
「・・・そうね。でも、わたしたちはどうするの?このままだと、あの炎がわたしたちに追いつくのも時間の問題よ」
幸い、フラットのお陰で炎は少しずつしかこちらに近づいてきていないようだ。
「この大草原もどこかで終わってるだろう。そこまでただ突っ走るしかねぇな」
「確かに、この大草原にも終わりはあるだろう。でも、それはどこにあるんだろう・・・」
「どういう意味だ?」
「この大草原に果てがあっても、その果てが遠すぎると・・・」
「炎が追いついて来ちゃって、意味がないっていう意味でしょ」
タクトはパールに向かって黙って頷き、後ろを振り向いた。炎は草原の大部分を焼き尽くし、さらに、追いかけてくるスピードも増していた。炎が大きくなったせいで、フラットの力が弱まったのだ。果ては全く見えてくるようすがなかった。
「ねぇ、少し歩かない?炎はフラットが止めてくれてるから安心でしょ」
三人のスピードは明らかに衰えていた。
「タクト、パールの言う通りだ。少し休もう」
「駄目だ。あの力もいつまで持つか・・・」
タクトは二人の提案に渋った。
ウェドが立ち止まった時、はるか遠くにあった炎が「バーーン!」という爆音と共に、まるで空もいっしょに燃やしているかのような大きな炎に変化した。
そして、その炎は今までにない勢いで向かってきた。

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