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時と空の唄12-6

[292]  花神ミライ  2009-02-06投稿

振り向くとそこには澄んだ瞳でフォーを見つめ佇むシーラがいた。
「シーラ!もう大丈夫なのか?」
「ええ。」
いつも通りの笑顔でシーラがそう返事をした。
「私も、いつまでも寝てる場合じゃないようだし。」
「それよりも…シーラ。
核心の部分…ってのは…、何なんだ…?」
未だ激しい頭痛と闘いながらフォーは途切れ途切れに尋ねる。
「貴方の記憶に隠された、もう一つの記憶。」
「どういう…意味だ…?」
「…貴方の、ご家族のことよ。」
シーラがそう告げるとフォーの脳内に様々な記憶が甦ってきた。
「う……
うわあぁぁあぁああ!!!」
フォーは今度はさっきよりも激しく、喉が潰れるのではないかと思うほど絶叫した。
その声の大きさに雪はびくりと肩を震わせたが、シーラはその様子を、ただ黙って見ていた。

憐れむように、

祈るように、

見届けるように、


ただ、黙って

その様子を見ていた。

「く…はぁはぁ…
思い…出した…よ
ちゃんと、全部……」
絶叫をやめたフォーが疲れきった声で言った。
その瞳は不安定に揺れている。
「…そう。」
優しい声で、小さくシーラが言った。
直後、フォーはガックリと崩れ落ち意識を失った。

「私は…
私たちは、フォーがこの記憶を持っている事で、彼が壊れてしまうと思ったの。彼にとって、あの記憶は固く蓋をしておきたいものだもの。」

だからこそ、シーラとレミスは『契約』を交わしたのだ。

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