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ロストクロニクル7―7

[426]  五十嵐時  2009-02-07投稿
「危ない!」
弓を構えていたパールはウェドに突き飛ばされた。その直後、犬が右から飛び出してきた。
ウェドは犬をハンマーで殴りつけたが、犬はさっと体勢を立て直し、再びウェドに向かっていった。
「パール!走れ!」
パールは新たに現れた炎の方へ走った。
「ウェド!ありがとう。気をつけてね!」
パールは反対方向から走って来る人間に向かって、走りながら弓を構えた。
「わたしの勘が当たってるといいけど」
少し高めに矢を射た。
矢は空中で何かに当たったかと思うと、目の前にあったはずの世界が音を立てて崩れ始めた。
「やっぱり・・・鏡」
鏡は草原の端から端まで見えないところまで続き、その鏡の亀裂は中心から徐々に端まで拡がり、ジグソーパズルのように崩れ去った。
崩れた鏡の中にはひとつの村があり、そのさらに奥には、大きな建造物が聳え建っていた。
「こんな所に村があったなんて・・・もしかしてあの建物が『鏡の宮殿』かしら」
パールはその村の中へ吸い込まれるように入っていった。

タクトは恐る恐る目を開けた。目を開けるとそこは炎に包まれた世界だった。
「どうなってるんだ?」
タクトは周りをよく見た。体が薄く白いベールで包まれていた。
訳も分からずただただ立ち尽くしていると、炎が完全に通り過ぎた。
遠くの方に誰かが立っていた。
「フラット!」
タクトはフラット元へ駆け寄った。
「あ、タクトさん!どうしてこんな所に?」
フラットは意外に元気な顔をタクトに見せた。 「さぁ、気付いたら体が白いベールに包まれてて・・・」
そこまで言うとフラットは突然、笑顔になった。
「良かった〜。役に立ったんですね」
タクトはフラットに向けて首を傾げた。
「え?ウェドさんから聞いてないんですか!・・・『ちゃんと説明しといて下さいね』って言っておいたのに」
フラットは続けて「ウェドさんから布を貰いませんでしたか?」と問いかけた。タクトは王立図書館でウェドから貰った折れた短剣を出した。
「それは三人の勇者の内のひとりが残した武器なんですよ」
タクトはミュークの話を思い出した。
「その短剣には魔導師の魔力を弱める力があるんです。僕の魔力は小さいので完全に消えたみたいですね」
タクトは短剣を見つめた。
「その短剣、大切にして下さいね。きっと役に立ちますから」

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