初めての二人の帰り道
とめどない切なさが込み上げる
もしもこれが最初で最後の出来事だとしたら
そんな想いをしているのは私だけだと思うから

二軒目に行こうかなんて貴方から言ってくれたら
何の躊躇いもなく頷くのに
そんな期待なんてお構いなしに貴方が欠伸をした
疲れた表情に少し悲しくなった

『俺、手を繋ぐとすぐその人を好きになるんだよね』と突然言った
心臓が破裂しそうになる
私に向けられた言葉ではなかったとしても
ただ話す事がなくてそんな事を言ってみただけだったとしても
だって誰でも勘違いをしてしまうだろう
だったら試してみたい
私を好きになってしまうのか
一瞬手に触れてみようかと思ったけれど
その瞬間に夢から覚める
邪魔をする存在が
踏み出してはいけない世界が私を現実へと引き戻す
だから『そうなんですか』とただ笑った
貴方の左手を掴んでこのまま何処か遠くへ行ってみたい
一時の幸せでも構わないと思えるなら
完成する事のない愛でもいいと思えるなら
踏み出して後戻り出来なくなっても貴方が存在してくれているだけで十分だと思えるなら
過ちを犯しその罪を償う方法を知っているなら

もうすぐ貴方との別れの時
短い距離だった
だけどほんの少しだけ
貴方に近付けた気がした
それだけで十分
私はそれだけでも幸せだった
寂しくはない
また明日会えるから
そう言い聞かせて残り僅かな帰路を強く踏み締めた

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