○●純+粋な恋●27
5-? 初秋の桜
『じゃあ,私が死ねば良いですよ。』
『‥何だと?』
京太郎の顔がさっと青くなった。
『どうせ死ぬんだ。いつ死のうが変わりはない。だから兄さん,私を殺して下さいよ。』
京太郎はその言葉を聞き渾身の力を込めて純を殴った。
純は畳の上に倒れ込む。
『馬鹿な事を言うな!!
命をつなど俺は絶対に許さないぞ。
お前は病で生きる精神も衰えたのか!!』
以前の純は生きる事に一生懸命だった。
しかし今の純にはその面影さえ見えない。
『‥病で書は愚か,大切な人をも失った。
私にはもう,生きる理由がないんですよ。』
純は殴られた頬を痛そうに抑えた。
京太郎は純と同じ目線になるよう腰を下ろし言った。
『ならば,死ぬ為に生きるんだ。』
『死ぬ為に?でも‥』
純の声が震えた。
『私は生きているだけで何の価値もないじゃないですか‥』
京太郎は珍しく大きな声を出した。
『例え価値が無くとも,
俺はお前を見放しゃしない!!』
最初から純の価値が,病なんかで失われる筈がないのだ。
『本当‥ですか,』
『ああ。』
兄の優しさを感じ,純の目から涙が落ちた。
京太郎はそんな純の肩を抱いた。
純は嗚咽を漏らしながら何度も呟く。
『ありがとう‥
ありがとう。』
涙の中で京太郎はそれを聞いていた。
†
純の筆は,後日京太郎が丁寧にしまった。
いつかこれが,純の存在した印となるのだ。
その日は,
京太郎が思うより早く来る事になる。
○●続く●○
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