サークルチェンジ #21
「おやじのバカヤロー!」
「おやじのクソッたれ!」
隼人は職員室を後にすると校門を飛び出し、下校中の他の生徒の目も憚らず泣きながら走り出していた。
母子家庭の長男である隼人にとって秋吉の厳しくも優しい、まるで父親のような接し方はたまらなかった。
と、同時に閉じ込めていたはずの実の父への怒りや憤りが隼人の中で渦巻いていた。
野球の試合でどんなにヤジられ家に帰ろうと、学校の行事はいつも一人だろうと、長男である自分が弱音や甘えを言っている場合ではないと踏ん張ってきた隼人の目に、珍しく涙があふれ出ていた。
隼人もまだ15歳の少年である。
一方、秋吉はかつて別の県立高で監督を務めていた頃の教え子、日ノ瀬亮介を隼人とダブらせていた。
日ノ瀬の思い切りのいいレッグアップを活かした左腕からの130?台後半の速球と落差のあるカーブ、投球モーションが大きくとも容易に盗塁を許さない巧みな牽制は、秋吉に甲子園を意識させるほどのものだった。
古風な顔つき、真っすぐな瞳、ふてぶてしいほどの授業中の“居眠りっぷり”etc…
秋吉は隼人に日ノ瀬の面影を見ていた。
もっともこの春、秋吉が尾張ヶ丘に赴任してきたのは社会科担当の補充という名目であり、野球部の監督としてお呼びがかかったわけではない。
秋吉自身も、赴任してきた当初は野球の指導に携わる気はなかった。
しかし秋吉は長年の教員生活から、非行に走る少年の多くが家庭内に何らかの原因を抱えていることをイヤというほど知っていた。
「あの子から野球をとったら間違った方向へ行ってしまう。」
隼人の姿に眠っていた何かを呼び覚まされた秋吉はまず、隼人の普段の学校生活を改善することで学校からの野球部への協力を得ようと考えた。
すっかり日も落ちて辺りが真っ暗になった頃、隼人は走り疲れ、矢作川(やはぎがわ)沿いの畦道の脇に体育座りで顔をうずめて眠ってしまっていた。
すぐそばを通る、東名高速の夜空を突ん裂くような騒音も気にならないほど、ぐっすりと…
「おやじのクソッたれ!」
隼人は職員室を後にすると校門を飛び出し、下校中の他の生徒の目も憚らず泣きながら走り出していた。
母子家庭の長男である隼人にとって秋吉の厳しくも優しい、まるで父親のような接し方はたまらなかった。
と、同時に閉じ込めていたはずの実の父への怒りや憤りが隼人の中で渦巻いていた。
野球の試合でどんなにヤジられ家に帰ろうと、学校の行事はいつも一人だろうと、長男である自分が弱音や甘えを言っている場合ではないと踏ん張ってきた隼人の目に、珍しく涙があふれ出ていた。
隼人もまだ15歳の少年である。
一方、秋吉はかつて別の県立高で監督を務めていた頃の教え子、日ノ瀬亮介を隼人とダブらせていた。
日ノ瀬の思い切りのいいレッグアップを活かした左腕からの130?台後半の速球と落差のあるカーブ、投球モーションが大きくとも容易に盗塁を許さない巧みな牽制は、秋吉に甲子園を意識させるほどのものだった。
古風な顔つき、真っすぐな瞳、ふてぶてしいほどの授業中の“居眠りっぷり”etc…
秋吉は隼人に日ノ瀬の面影を見ていた。
もっともこの春、秋吉が尾張ヶ丘に赴任してきたのは社会科担当の補充という名目であり、野球部の監督としてお呼びがかかったわけではない。
秋吉自身も、赴任してきた当初は野球の指導に携わる気はなかった。
しかし秋吉は長年の教員生活から、非行に走る少年の多くが家庭内に何らかの原因を抱えていることをイヤというほど知っていた。
「あの子から野球をとったら間違った方向へ行ってしまう。」
隼人の姿に眠っていた何かを呼び覚まされた秋吉はまず、隼人の普段の学校生活を改善することで学校からの野球部への協力を得ようと考えた。
すっかり日も落ちて辺りが真っ暗になった頃、隼人は走り疲れ、矢作川(やはぎがわ)沿いの畦道の脇に体育座りで顔をうずめて眠ってしまっていた。
すぐそばを通る、東名高速の夜空を突ん裂くような騒音も気にならないほど、ぐっすりと…
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