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ふきだまりの人びと

[192]  喜多野 ヒロシ  2009-02-14投稿
世界的な不況の風が日本にも吹き付けた年の秋、私は会社をリストラされた。
従業員10人たらずの地方の小さな広告代理店だった。
新聞のチラシが主な収入だった会社の売り上げは、不況で25%も落ち込んでしまっていた。
社長は義理がたいひとで、私が会社を去る時、何度も何度も頭を下げていた。
給料3ヶ月分の退職金も出してくれた。
しかし、私は52歳。資格もない。
仕事はなかった。
ハローワークは変な熱気が漂っていた。
選り好みせず何でもやろうと思ったが、それでもなかった。
3ヶ月通って諦めかけた年の暮れ、カミさんがスーパーに置いてあるアルバイト情報誌を持って来た。
藁をもすがる思いで覗いた紙面にそれはあった。
新聞販売店の募集だった。年齢不問、未経験者歓迎の文字が目に飛び込んで来た。
私は晩婚でまだ中二と小五の息子がいた。
迷ってる場合ではなかった。すぐ、受話器を取った。面接を受け3日後には、朝2時に起きる生活が始まった。

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