時と空の唄12-8
弟は、死んだ訳じゃない。
機械都市で行われていた、人の魔力を機械に移して兵器にしようという実験のモニターに、弟は呼ばれていたんだ。
弟は、『身体ごと』機械に入れられて帰ってきた。
機械都市から逃げてきたらしい。
…あの時のシーラの表情といったら、なかったな。
そりゃもう怒ってた。
「なんてこと…」
なんて呟いてさ。
結局、弟は暴走して父と母を殺め、後からやってきた黒スーツの連中に殺された。
俺は、壊れてしまいそうだった。
弟は訳のわからない機械の中に入れられて挙げ句の果てに追っ手に殺され、両親はその弟の手にかかって死んだ。
俺の『日常』は、一変した。
家から明かりは消え、温かな家庭は夢の中だ。
俺は明かりもつけずに真っ暗な家で、ただ虚ろの中にいた。
そんな俺に、光をくれたのは彼女と親父だった。
記憶の操作は、俺にとってまさに救いだった。
全てを忘れ、俺はまた笑えるようになった。
彼女と親父と三人で撮った写真と、彼女に惹かれていたという確かな事柄だけを鮮明に俺の中に残して。
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