心のコップ2
僕らの最後の漫才の1週間前、
中島はまだ元気だったのに…。
「嶋田、来週楽しみだな。『シマシマ』の10年の集大成を見せつけてやろうぜ!」
中島、張り切ってたなあ。
とても、ガンで入院してる奴には見えなかった。
「中島、漫才の練習、するか?」
「ああ、もちのろんだ!」
本番の日だけ、病院を抜け出して会場へ行く。
中島にとって、外出できるだけでも嬉しかったはずだ。
「嶋田、最後のオチはバッチリ決めろよ!」
中島の声が、静かな病室に響いた。
「いっちまうんかい!」
僕は何度も何度もつっこんだ。
9999回目の
「いっちまうんかい!」
の時、僕も中島も汗まみれでステージに立っていた。
5時間近く同じツッコミをしていたけれど、お客さんが誰1人帰らなかったのは、驚きだった。僕はお客さんを尊敬したい気分だったよ。
そして、10000回目の
「いっちまうんかい!」
やっと、
10000回のいっちまうんかい、が終わった。
この時の感動は、今も忘れられない。
今さっき、中島は天国へ昇っていった。
まだ、昇っている最中かも知れないな。
僕のこの涙が、大雨に変わって、嵐になればいいのに。
そうすれば、中島は天国までたどり着けずに、いつもみたいにおどけた顔で、途中でここに戻ってくるかも知れない。
だけど今は思いっ切り晴れ。
コップじゃあ、またこの悲しい気持ちが溢れてきちゃうよ。
僕の心には、バケツみたいに大きなのが必要みたいだ。
ー終わりー
中島はまだ元気だったのに…。
「嶋田、来週楽しみだな。『シマシマ』の10年の集大成を見せつけてやろうぜ!」
中島、張り切ってたなあ。
とても、ガンで入院してる奴には見えなかった。
「中島、漫才の練習、するか?」
「ああ、もちのろんだ!」
本番の日だけ、病院を抜け出して会場へ行く。
中島にとって、外出できるだけでも嬉しかったはずだ。
「嶋田、最後のオチはバッチリ決めろよ!」
中島の声が、静かな病室に響いた。
「いっちまうんかい!」
僕は何度も何度もつっこんだ。
9999回目の
「いっちまうんかい!」
の時、僕も中島も汗まみれでステージに立っていた。
5時間近く同じツッコミをしていたけれど、お客さんが誰1人帰らなかったのは、驚きだった。僕はお客さんを尊敬したい気分だったよ。
そして、10000回目の
「いっちまうんかい!」
やっと、
10000回のいっちまうんかい、が終わった。
この時の感動は、今も忘れられない。
今さっき、中島は天国へ昇っていった。
まだ、昇っている最中かも知れないな。
僕のこの涙が、大雨に変わって、嵐になればいいのに。
そうすれば、中島は天国までたどり着けずに、いつもみたいにおどけた顔で、途中でここに戻ってくるかも知れない。
だけど今は思いっ切り晴れ。
コップじゃあ、またこの悲しい気持ちが溢れてきちゃうよ。
僕の心には、バケツみたいに大きなのが必要みたいだ。
ー終わりー
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