駆けゆく船
吹きつけてくる海の風
潮の匂いがしみる
太陽は赤みをおびて
西の海へゆっくり堕ちていく
のどかな沿海諸国、
マリアの中で一番
粗暴で物騒でガラの悪い小さな町、シアン
叫び、喚き、怒号が交錯する裏路地を、
少年と言える程に若い
二人組が駆けていく
その後ろには十数人ばかりのイカつい男たちが
手に手に棒切れやら
刃物やらを携えて、
二人を追い立てている。前を行く二人は
必死の形相で足を急がせ息を荒く弾ませながらもお互いに文句を飛ばし、罵りあっているようだ。「こっ、この役立たずっ!バハァ!」
「ハアハァそっ、そんなこと言ったてっ!
俺だけじゃ無理だって
あっ、あいつに一発入れて気絶さすなんてっ!
ハァ」
少年の一人が幾分震える指で、追いかけてくる
一団の先頭にいる
特別にゴツくタフそうな男をさす。
「バッキャロウ!
しこたま応援呼ばれたじゃねーか!
びっ、
ビビってんじゃねー!」兄貴分らしい一人の少年が喉を枯らして叫ぶ。
「狭い路地で一気に撒くぞ!しっかりついて来いルス!」
ルスと呼ばれた少年の方は応える代わりに
死ぬものぐるいでターボをかけた。
「オラッ!」
と掛け声と共に、
狭い間隔で建ち並ぶ家のレンガ壁を鮮やかに
駈け登り、屋根によじ登った。
あと一歩のところで
捕まえ損ね、怒り狂った目を向けて来る男たちを尻目に、兄貴分の少年の声が息を荒げながらも、高らかに響く。
「残念だったなオッサンたち!
将来、海で天下を取る
このガレット様がこんなところで取っ捕まって
堪るかってんだ!
ぜってー船だって手に入れてやる!」
少年二人は沈むゆく夕陽の最後の輝きを背に浴びて、鮮やかに身を翻して路地裏へ消えた。
海は果てもなく広かった
潮の匂いがしみる
太陽は赤みをおびて
西の海へゆっくり堕ちていく
のどかな沿海諸国、
マリアの中で一番
粗暴で物騒でガラの悪い小さな町、シアン
叫び、喚き、怒号が交錯する裏路地を、
少年と言える程に若い
二人組が駆けていく
その後ろには十数人ばかりのイカつい男たちが
手に手に棒切れやら
刃物やらを携えて、
二人を追い立てている。前を行く二人は
必死の形相で足を急がせ息を荒く弾ませながらもお互いに文句を飛ばし、罵りあっているようだ。「こっ、この役立たずっ!バハァ!」
「ハアハァそっ、そんなこと言ったてっ!
俺だけじゃ無理だって
あっ、あいつに一発入れて気絶さすなんてっ!
ハァ」
少年の一人が幾分震える指で、追いかけてくる
一団の先頭にいる
特別にゴツくタフそうな男をさす。
「バッキャロウ!
しこたま応援呼ばれたじゃねーか!
びっ、
ビビってんじゃねー!」兄貴分らしい一人の少年が喉を枯らして叫ぶ。
「狭い路地で一気に撒くぞ!しっかりついて来いルス!」
ルスと呼ばれた少年の方は応える代わりに
死ぬものぐるいでターボをかけた。
「オラッ!」
と掛け声と共に、
狭い間隔で建ち並ぶ家のレンガ壁を鮮やかに
駈け登り、屋根によじ登った。
あと一歩のところで
捕まえ損ね、怒り狂った目を向けて来る男たちを尻目に、兄貴分の少年の声が息を荒げながらも、高らかに響く。
「残念だったなオッサンたち!
将来、海で天下を取る
このガレット様がこんなところで取っ捕まって
堪るかってんだ!
ぜってー船だって手に入れてやる!」
少年二人は沈むゆく夕陽の最後の輝きを背に浴びて、鮮やかに身を翻して路地裏へ消えた。
海は果てもなく広かった
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