夏と西瓜
人はいつか忘れてしまう生き物だとしても
記憶を失くすことは誰にだって怖い
あの夏あなたは必至に闘っていたんだろう?
それでも忘れたくないんだと
第一話
長い朝礼の後、教室に戻ると僕らは一斉に身の回りの片づけを始めた。
グラウンドから聴こえるけたたましい蝉の鳴き声が、暑さを倍増させている。
昨年に引き続き4年2組の担任を受け持った松セン(もとい松井先生)は、全く嫌味な程にうんと宿題を出して
「いいかー。夏休みだからと言って浮かれるんじゃないぞー」
とお決まりの文句を付け足した。
「ヒロム、ヒロム!」
後ろの席から背中をつついて僕を呼んだのは親友のソウタだ。
「松センのやつこんなようけ宿題出しおって、けったいなやっちゃな〜。
あっ、ほんで8月6日の夏祭り行くやろ?」
あからさまに嫌な顔で担任を非難したかと思うと、ソウタは急にその大きな目を輝かせて3年前から毎年こぞって出かけている夏祭りの話題を出した。
神戸生まれの彼は、時々意味不明な言葉を使う。
ようけとか、けったいとか。
だけど、日本人は標準語しか使わないと思い込んでいた僕には、関西弁は新鮮だったし、何だか英語みたいで格好良いなぁなんて密かに思っていたりした。
「ごめんソウタ。今年はお父さんの仕事の都合とか何とかで、5日からおばあちゃんちに帰る事になってるんだ。
ホントついてな…」
「なにーっ!!?」
僕の最後の言葉に被せるように、ソウタが素頓狂な声をあげたので、松センが鋭くこちらを睨んだ。
これに気付いたソウタはいくらか声のトーンを落として続ける。
「ほんならおまえ、平和登校日休めるやん!えーなぁ〜!あっ、お土産よろしくな!できればお菓子で」
そう言って、僕の拳一つ分ぐらい余裕で入りそうな大きな口を開けてニカッと笑った。
記憶を失くすことは誰にだって怖い
あの夏あなたは必至に闘っていたんだろう?
それでも忘れたくないんだと
第一話
長い朝礼の後、教室に戻ると僕らは一斉に身の回りの片づけを始めた。
グラウンドから聴こえるけたたましい蝉の鳴き声が、暑さを倍増させている。
昨年に引き続き4年2組の担任を受け持った松セン(もとい松井先生)は、全く嫌味な程にうんと宿題を出して
「いいかー。夏休みだからと言って浮かれるんじゃないぞー」
とお決まりの文句を付け足した。
「ヒロム、ヒロム!」
後ろの席から背中をつついて僕を呼んだのは親友のソウタだ。
「松センのやつこんなようけ宿題出しおって、けったいなやっちゃな〜。
あっ、ほんで8月6日の夏祭り行くやろ?」
あからさまに嫌な顔で担任を非難したかと思うと、ソウタは急にその大きな目を輝かせて3年前から毎年こぞって出かけている夏祭りの話題を出した。
神戸生まれの彼は、時々意味不明な言葉を使う。
ようけとか、けったいとか。
だけど、日本人は標準語しか使わないと思い込んでいた僕には、関西弁は新鮮だったし、何だか英語みたいで格好良いなぁなんて密かに思っていたりした。
「ごめんソウタ。今年はお父さんの仕事の都合とか何とかで、5日からおばあちゃんちに帰る事になってるんだ。
ホントついてな…」
「なにーっ!!?」
僕の最後の言葉に被せるように、ソウタが素頓狂な声をあげたので、松センが鋭くこちらを睨んだ。
これに気付いたソウタはいくらか声のトーンを落として続ける。
「ほんならおまえ、平和登校日休めるやん!えーなぁ〜!あっ、お土産よろしくな!できればお菓子で」
そう言って、僕の拳一つ分ぐらい余裕で入りそうな大きな口を開けてニカッと笑った。
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