携帯小説!(PC版)

獣?

[663]  寒明  2009-02-18投稿
惨劇の残骸とも呼ぶべき廃屋には夥しい血痕と肉片がばら撒かれていた。
深夜に暴走族が集会の場所にと使われていたコンクリで建てられたアパート。火事があったのか黒ずんだ箇所もいたるところにある。壁にはスプレーのような物で書かれた文字、絵がある。
―死神貴族ここにあり―\r
それは暴走族の名前だった。文字通りに死神と出くわした彼等は無残な姿となった。
僕とデュークは外に出た。
日差しは眩しいが、風は冷たく寒い。でも空気がおいしかった。血生臭い物ばかり見たからかも知れない。吐き気を堪えながら僕らは帰路についた。

『鬼人』
僕の脳裏にその考えが生まれた。残酷な運命に翻弄されながら懸命に生きようとしたあの人。もしも生きていたらきっと…
不意に向けられた殺気。
粘着質な視線から放たれていた、知った顔だった。

―姉様―\r

『逃げるぞ』
ボソッとデュークから耳打ちをされ、咄嗟に走り出した。追い掛けてくる気配はないが体の内側から針で突き刺されるような強烈な不快感だけが残った。

逃げても逃げてもきっと無駄なんだろう。僕を見つめながら、まるで好物を堪えるような獣の目をして微笑んでいた。まだ食い足りないと、そろそろデザートを食べたいな…そんな印象を受けた。








―カンノイイコネ、美味しそう―\r
いつまで経っても変わらない。普通のではもう食い足りない、いいえ、食い飽きてしまったの。だから愛しい、そして極上の食材を見付けたわ。

待っててね、真貴。
ネエサマトイッショニシツアゲル。

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