｢しょーま、しょーま｣
少年の声に振り返る私。今日もいつものように、あぁ、仕事だるいなぁ。と思いながら、下校の子どもたちでにぎわう農道を歩く。
そして、職場に着き、事務所に入り、いつものように挨拶をする。
と、突然、
｢ダメよダメよ!!子どもが入っちゃ。
出て行った出て行った。｣
どうしてしまったのか？
駆け込んだトイレの鏡に見えたのは、自分の姿ではなく、1人の少年の姿であった。
夢か現実か。
体は少年だが、心は大人だ。
人様に迷惑はかけれまいと、1人旅に出る。
私は夜な夜な、街に向かって歩き続けた。
そして、いつの間にか辺りは明るくなっていた。
子どもたちが学校へ向かって歩いている。
｢キミ学校は？｣
そこでふっと、自分が少年であることを思い出す。
｢あっ、学校…。
行かないよ。｣
と言うより、行けなかった。
ぼーっと、子どもたちが遊ぶ校庭を見つめながら、自分が今できることを考えていた。
お腹空いたなぁ…。
少年になった今、お金を持っているはずもなかった。
働かなければ。そう思った。が、この姿じゃどうすることもできなかった。
歩き過ぎてボロボロになった私の足は、いつの間にか自分の家に向かっていた。
やっとの思いで、たどり着いた家には、温かい明かりがともっていた。
とめどなく涙が溢れ出していた。
そして私は1人、自分の本当の姿に戻りたいと強く願うのだった。

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