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雨音 ♪♪

[272]  紫音  2006-07-06投稿
『雨の日は憂鬱になるけど、雨は嫌いじゃない』

君はそんな歌詞の歌を歌い終わると私を見て笑った。

「耳、大丈夫ですか?」
「え?」
「ずっとそこに座ってて。僕、下手だから。」
「そんなことない!」

君のちょっとした謙遜に思わず本気で反論する私。
何言ってるんだ。
しかも立ち上がって仁王立ち。
顔があつくなるのがわかる。

「そんな・・こと、ない・・です。」
「ふふ。ありがと。」

そういってギターケースを開けてギターをしまう。
中にはいろんな物が入っている。
ハードケースだからきっと小物を入れておくのにもちょうどいいんだろう。
ギターをしまうってことは君は帰っちゃうの?

「もう・・おしまいなんですか?」
「あぁ、うん。」
「邪魔しちゃって・・ごめんなさい。」
「えっ違うよ。時間だから。」

その言葉は優しいうそだって思った。
私が邪魔だったから帰ろうとしたけど、傷つけないようにそういってくれた。

「ゆうま兄ちゃん!」
「あ、太一。」

前から走ってきた小さな男の子がその子に飛びついた。
ゆうまっていうのか。

「あれ?兄ちゃん友達?」
「うん。友達。」

太一くんにそういった後君は私を振り返る。
私はその目が語ることを理解して言った。

「よろしくね、太一くん。芹沢あきらです。」
「そうそう。あきらちゃん。」
「ふーん。おれたいちー。」

太一くんの登場は君の言葉がうそじゃないってことの証拠になった。
私がぼおっと二人のやり取りを眺めていると君が私を見た。
私はぼおっとしているところをみられて
また顔があつくなっていくのがわかった。
だめだ。何にもいいところ見せれてない。

「じゃぁ、行くね。あきらちゃん。」
「あ、うん・・・。」
「またね。」

『またね。』
その言葉は私にとって幸せの音以外のなんでもなかった。
その言葉は私のなんでもないその日を特別な日に変えてくれる
魔法の言葉。
雨音と彼の声が奏でる魔法の呪文だった。

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