神の丘〜序章〜終
「お帰り 憂牙」
部屋に入ると、金色の、腰まである長い髪を軽くまとめた、長身の綺麗な青年が立っていた。
食事の準備をしていたのか、手には色とりどりの野菜が入ったボールを持っていた。
「今から昼食をとろうと思っていたのだが、憂牙も食べるかい?」
柔らかな笑顔で問い掛ける。
「…いや、要らない。‥少し休む」
そう言うと、表情を変える事もなく、青年の後ろにある部屋に入っていった。
部屋の中は薄暗かった。
無数に積まれた本・本・本の山。この部屋にある唯一の窓は、そんな本の山に埋められ、ハガキ一枚分の光を差し込む程度の大きさでしかなかった。
本の他にこの部屋にある物といったら、天井から吊された裸電球と、毛布が無造作に置かれたエバーグリーンのソファーだけだった。
コートも脱がず横たわる憂牙。キャスケットが床に落ちていた。
”ブゥーブゥーブゥー”
コートの中の電話が震える。
「‥なんだ?」
「なんだじゃないわよ!こっちは、あんたの為に防犯システムの解除から無線妨害までしてやったのに、お礼の一つもないわけ!?」
受話器の向こうから、若い女の怒鳴り声が響く。
「…感謝してる」
受話器を少し放して、憂牙は言った。
「そんな事を言うために電話してきた訳じゃないだろう‥」
「あったりまえよっ!…でっ、探し物は見つかったの?」
「…いや、あそこには無かった」
「国家秘密警察が動き出したという噂がある」
マルカス警部とミクロス警視の話しには続きがあった。
「国家が!‥なぜあの青年一人に!!」
「わからん。来週にでも一人の男がやってくるそうだ‥”マリア捕獲特別隊”として」
日はうっすらとオレンジ色に変わり初めていた。
序章 終
部屋に入ると、金色の、腰まである長い髪を軽くまとめた、長身の綺麗な青年が立っていた。
食事の準備をしていたのか、手には色とりどりの野菜が入ったボールを持っていた。
「今から昼食をとろうと思っていたのだが、憂牙も食べるかい?」
柔らかな笑顔で問い掛ける。
「…いや、要らない。‥少し休む」
そう言うと、表情を変える事もなく、青年の後ろにある部屋に入っていった。
部屋の中は薄暗かった。
無数に積まれた本・本・本の山。この部屋にある唯一の窓は、そんな本の山に埋められ、ハガキ一枚分の光を差し込む程度の大きさでしかなかった。
本の他にこの部屋にある物といったら、天井から吊された裸電球と、毛布が無造作に置かれたエバーグリーンのソファーだけだった。
コートも脱がず横たわる憂牙。キャスケットが床に落ちていた。
”ブゥーブゥーブゥー”
コートの中の電話が震える。
「‥なんだ?」
「なんだじゃないわよ!こっちは、あんたの為に防犯システムの解除から無線妨害までしてやったのに、お礼の一つもないわけ!?」
受話器の向こうから、若い女の怒鳴り声が響く。
「…感謝してる」
受話器を少し放して、憂牙は言った。
「そんな事を言うために電話してきた訳じゃないだろう‥」
「あったりまえよっ!…でっ、探し物は見つかったの?」
「…いや、あそこには無かった」
「国家秘密警察が動き出したという噂がある」
マルカス警部とミクロス警視の話しには続きがあった。
「国家が!‥なぜあの青年一人に!!」
「わからん。来週にでも一人の男がやってくるそうだ‥”マリア捕獲特別隊”として」
日はうっすらとオレンジ色に変わり初めていた。
序章 終
感想
感想はありません。