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青き心は遠く、

[282]  安家 延昭  2009-02-20投稿
「高いとこが好きな奴はちょっと変わっている」

昌也はそう思っていた。
そのいい例が今、昌也の目の前にいた。
浩紀は昌也など気にしていないといったような表情をしていた。
冬の切り裂くような風を受けているが寒がる様子もない。

「浩紀、降りてこいよ。俺はもう中に入るぞ。」

昌也は大声で言い校舎の中に入った。
かじかんだ手を擦りながら待っていたが、来る気配はなかった。

…まただ。

思いながら、昌也は外に出た。
やはり風は体を切り裂くように冷たい。害意があるのか、と思うほどだった。

テトラポッドの近くにまだ浩紀は立っていた。
一点を見つめたまま、眉間にシワを寄せている。

「浩紀、降りてこいよ。」
浩紀は動かない。

昌也は梯子を上り、浩紀の横に立った。
「お前、寒くないのか。中入ろうぜ。」
返事はなかった。
「聞いてんのか、浩紀」
昌也はきつく言った。

「聞こえてる、全部。」
浩紀は短く言った。
降りようと言って、昌也を置いて、浩紀は先に行ってしまった。

一人取り残されたかたちである。

…変わっている。

思いながら、昌也は梯子を降りた。
風はまだ吹いていた。止む気配はない。

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