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ロストクロニクル7―11

[442]  五十嵐時  2009-02-20投稿
「止めるんだ!ダイヤ」
ダイヤはタクトの言葉に応答しなかった、かと思うと今度は三人を囲む六つの鏡が時計回りにゆっくりと回り始めた。
「どうなってるんですか!」
フラットのパニックに陥った声が聞こえる。
鏡の回転は段々速くなってきた。
「フラット!この鏡を溶かせないか?」
タクトが素早く訊いた。
フラットがさっと回転する鏡に近づいた。
「・・・やってみます」
「時間が無さそうだ!急いでくれ!」
ウェドが急かす頃には既にフラットは鏡に向けて炎を放つところだった。
ついに鏡の回転が異常なまでの速さになってきた。
「溶かせ!」
ウェドの掛け声と共にフラットは炎を放った。
鏡は溶けずに炎の衝撃で全て割れてしまった。
鏡の外にはダイヤが立っていた。
「このやろう!許さねぇ!」
ダイヤの顔を見るや否やウェドは怒りの形相でダイヤに詰め寄った。
ダイヤはひとつ「ふふふっ」と笑うとそのまま気が狂ったように腹を抱えながら笑い始めた。
「何がおもしろい!」
「・・・ごめんなさい、だってあんな必死に・・・」
そして今度はウェドを指さしながら、さらに笑い始めた。
「・・・このやろう・・・」
ウェドはとうとうハンマーを持ち出した。
タクトの「駄目だ!」という必死な声とダイヤの「ちょっと待ってよ」というまだ少し笑っている声とが同時に出た。
「・・・実はあたしの力じゃ他人を鏡の世界に連れ込むことはできないんだ。くくっ、なのに・・・」
ダイヤはここで耐えきれずに再び笑い始めた。
「・・・まったく」
ウェドも呆れ返ってしまった。

ダイヤもようやく落ち着きを取り戻した頃にタクトは切り出した。
「ダイヤ、そろそろ、パールのいる所へ連れて行ってくれないかい?」
「えー!もう少し一緒に遊びたいのになー・・・」
ダイヤの悲しそうに俯く姿を見ると、他に誰も居ないこの村でたったひとりでいる寂しさが伝わってくるようだった。
「でも、パールも僕たちの大切な仲間なんだ。早くその体をパールに返してくれないとパールも僕たちも困るんだ」
「いや!あたしこの体、気に入ったもん!この長い髪も遠くまで見えるこの目も、それに動きやすいし・・・悪いけど諦めてくれる?」
冗談じゃない!
「頼むから返してくれ」
「お願いします」
ウェドとフラットも懇願し始めた。

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