寝転ぶ私に近付いて来る手に気付く
突然抱き着かれ体に触れる

そこで酔いも眠気も一気に覚めた
手を払いのけもう一つのベッドに移動した
それでも抱き着いて来る
『寝るだけって言ったはずです』と冷たく言い放った
『一緒に寝よう』と言ってくる
そう言ってはいるが手は私の足を触っている
気持ち悪い
最悪

懸命に抵抗し部屋を出て行こうと靴を履いた
彼が腕を掴む
『俺が出て行くから』
全てが嫌になった
いつもこの人は年下でも部下でも敬語を使うのに
近付こうとするこの人が嫌だった

『だったら出て行って下さい』とバッグを下ろした
出て行こうとしない
段々と自分の顔が引き攣る
『出て行くけどもう少しいさせて』とまた強く抱き締められた

もとはと言えば私が悪い
軽い気持ちで彼に着いて行った
根も葉も無い嘘を信じた
責める資格はない
だから傷付けない様
柔らかく断ろう

『職場で会った時気まずくなるのは嫌です』
これは本音
それだけは嫌だしこの人とどうこうなる気はない

それでも腕の力を弱めようとはしない
少しずつ生理的に受け付けないモヤモヤとした思いが込み上げる
力付くで体を押しやってひっぱたきたくなる衝動に駆られた
だけど上司である以上そんな事は出来ない

必死に考えた
上手い言い訳
『結婚されてるのにこんなのマズイです』

自分のそんな台詞に胸が痛んだ

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