0316 -1-
車の外はさっきまで降っていた雨がいつのまにか止んで、明るさを取り戻しつつあった。
きのうまでは暖かい日が続いていたのに、今日になるとまた2月らしい気温に逆戻りだ。
とはいえ車の中は暖房がきいていて暖かく、外の寒さを感じさせないし、なによりラクして学校まで行けるから快適だった。
りょうちゃんの運転の乱暴さに目をつむればだけど。
また急停車、助手席のあたしは前につんのめる。
りょうちゃんがこうしてあたしのとなりにいるのは、なんだかちょっと不思議だった。
もうあのころみたいにあたりまえじゃないんだ。
まあ、普通そうだろう。
あたしたちはもう2年以上も前に別れてるし、第一りょうちゃんには紗奈ちゃんというかわいい彼女ができた。
あたしだってあれから彼氏のひとりくらいできたし(今はいないけど)、告白だって何人かから受けた。
「りょうちゃん、今日はありがとね、助かったよ。無理言ってごめんね。」
あたしが言うとりょうちゃんはちょっとだけ笑顔をみせた。
「別にいいよ、ついでだし。」
りょうちゃんの家はあたしの家からけっこう近い。
電車通のあたしにはかかえきれそうにない荷物があって、乗せてくれるようにきのうの夜メールで頼んだのだ。
りょうちゃんとはつきあってる間も別れたあともいろいろあったけど、今は普通に話せる。
特別会話がはずむわけじゃないけど、お互いにいがみ合うこともなく、こうして笑い合ったりもする。
別になつかしさなんてない。
悲しくもない。
寂しいとも思ってない。
もう普通のクラスメイトだもん。
未練なんてない。
あたしはりょうちゃんの横顔を盗み見る。
りょうちゃんて変わらないな。
でも紗奈ちゃんとつきあうようになってから、ちょっと頼もしそうになったかな。
そう、未練なんてない。
なのに
なのになんで何かを
なにかを伝え忘れたような、こんな気持ちになるんだろう。
卒業まであと17日―――――。
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