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ダブルトラップ!

[843]  坂崎金太  2009-03-02投稿
「――いやぁ、最近人生ってのがつまんなくってさー」
父はそう言うが、流石にこれは酷くないだろうか。……突っ込んだら死刑なのか。
いや、たとえ突っ込まざるとしても、このままにしておくことこそ死刑よりも残酷であろう。というかいっそ殺してくれ。
「……何で俺の部屋を改造したんだ?」
中学校から帰って来た俺が数秒間の絶句の後にようやく出すことができた言葉は、超がつくほど素朴な質問だった。
「ん?間取りが丁度良かったからなぁ」
当然、素朴な回答が返って来る。が、期待している回答ではない。
「俺のプライバシーはねぇのかよ……」
「ない!子供の分際でプライバシーなんて難しい言葉を口にするな!」
今頃は小学生だって口にしてるさ。まぁ意味合いが違ったりもしなくはないが――って違う。俺が聞きたいことはそういうことじゃない。
「これから俺はどうやって生きればいいんだよ……この部屋で!」
俺は改造好きな父が勝手に改造した俺のだった部屋を指さした。
――観葉植物が生い茂り、その床は針山、上はつり橋のような樹が天井からぶら下がり、窓があったであろう部分には何故か豹柄の布(?)がかかっていた。おまけに蛍光灯は蝋燭で、たまに熱で焼けた蝋が落ちてつり橋のような樹で固まっている。
まるでサバンナのアスレチックだった。
「さぁ毎日がサバイバルだぞ!」
……誰か俺を殺すか、このバカすぎるオヤジを殺してくれ。
「誰がするかよ!勝手に人の部屋改造しやがって!もういい、今日は居間で寝るから」
「ぐずぐずするなぁ!」
ドガッ!
部屋の中に蹴り入れられた。……!ちょっと待てこの状況をどうしろというんだ。天国の母よ教えてくれえぇ!
ガチッと恐ろしい音と共に、俺の部屋は密室になった。
「いろんな罠を仕掛けてるからなー!頑張って回避して生きろー!」
外で父が叫んでいた。外から鍵をかけられたらもう俺はなすすべはないのだ。
絶望するしかなかった。俺は一番安全である机の上に――向かって行こうとしたが、無理だった。
つり橋に油が塗っていて、すぐさま滑り墜ちた。


――床には針山。結果は言うまでもない。


追記

その後、父は殺人罪と銃刀法違反など、その他もろもろの罪で逮捕されたという。

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