ちゃんと覚えていてくれた
日が近付くと不安だった
私から何も言えなかったから
ただの口約束
それで終わる事も少しは覚悟していたから

『予約しとかないとね』
帰り際に言われた
唐突で少し驚いた
その一言で分かる
今週金曜日の貴方との約束
貴方は隠す事を知らないのね
堂々と人前で言うから職場の女性に聞かれた
女性は噂話が大好きなんだ
案の定『何処か行くの？』と聞かれたから『いや』としか言えなかった
焦りで動揺する
上手くごまかせなくて何となく罪悪感が残った
貴方は特に気にする風でもなく何も言わなかった

誰にも聞かれていない事を確認して時間を決めた
私はこんなに気にしているのに
もしも変な噂が立てば貴方も私も居づらくなるのは分かっているはずなのに
貴方がフリーなら何も気にする事はない
私がどう言われ様と構わない
ただ貴方に対してそんな目を向けられるのは嫌
多分『私のせいで』と自分を責めてしまうから

二人の秘密にしよう
何もなく終わっても
食事に二人で行くという
それだけの事でも私には危険な行動
波風は立てない様に
貴方には迷惑をかけない様にしたい

予約はした
これで本当の約束になった
嬉しいけど何だか怖い
実感して行く痛み
いくら私が喜びを感じたとしても秘密の恋なんて

私はやっぱり弱い
誰かに気付かれ始めるだけでこんなにも恐怖を伴うから

堂々と出来たらどんなにいいだろう
そうやって溜め息が漏れる

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