時と空の唄12-12
フォーが手を伸ばす。
しかし、その手をすり抜けるようにレミスは倒れた。
「…くそッ…!」
ランスォールが黒スーツを一人斬る。
「もう、許しません。
『銀色の風 戦慄の旋律 戒めの裁きを』!!」
雪が叫ぶように唱えた。
すると黒スーツたちは無数の風の刃に切り刻まれ、たちまち数は減った。
「よくやった、雪!」
残りはラウフが素早い動きで片付けた。
「今治癒術を…」
シーラが術を使おうと膝をつく。
「よい…」
レミスは優しい声で言った。
「親父、何言って…」
「自分の、体じゃ。わしのことはわしが一番わかっておる…。」
レミスから流れ出る血は全く止まる気配がない。
「フォー…」
目が見えていないのか、レミスは手だけでフォーを探す。
フォーがしっかりとその手を掴んだ。
「血の繋がりはなかったが、お前との20年は、悪くなかった…。」
「親父ィ……ッ」
「シーラ…」
「はい。」
「質問の答えをやろう。」
シーラが顔を近づけるとレミスはそっと耳打ちをした。
「…そうですか…。」
「神器を奉る儀式の場は、この世の最北の地…ルメール神殿の…最深部のルメリア洞窟じゃ……」
レミスはそう言って眠る為に目を閉じた。
スゥ、と一度深呼吸すればレミスが二度と目覚めることはなかった。
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