サンタの仮面を被る人 3
そんなわけで、カバンに入った指輪とケーキは用をなさないものと化していた。彼女と出会って一年。このために必死で貯めた金だったのに、あまりにも虚しすぎる。
このままカバンをどこかへ置き去りにして、アパートに帰ってしまおうか。このうえなく投げ遣りな気分に襲われる。
酒を飲んで何もかも忘れてしまいたいのに、有り金は底をついていた。指輪を質屋に出そうとも考えたが、この時間ではもう店が閉まっている。
自分は今日、この世でもっとも不幸な人間だとさえ思った。
そして今、俺は人間として一線を超えた行為に至ろうとしている。
路地の影から、一軒の家を覗いた。そこらの家よりは断然大きな造りだ。二階建てで、屋根は赤く、壁は生クリームのように白い。何となく、豪勢なクリスマスケーキを連想させるので、嫌な感じがした。
近寄ってみると、誰もいないのかと思うほど静かだ。まあ、こちらとしてはその方が助かる。
腰くらいの高さの柵を乗り越え、敷地内におり立った。
一応、通りを見渡してみる。
よし、誰もいない。
そして、深呼吸をした後、前を睨んだ。
この家から、金を盗んでやる。
このままカバンをどこかへ置き去りにして、アパートに帰ってしまおうか。このうえなく投げ遣りな気分に襲われる。
酒を飲んで何もかも忘れてしまいたいのに、有り金は底をついていた。指輪を質屋に出そうとも考えたが、この時間ではもう店が閉まっている。
自分は今日、この世でもっとも不幸な人間だとさえ思った。
そして今、俺は人間として一線を超えた行為に至ろうとしている。
路地の影から、一軒の家を覗いた。そこらの家よりは断然大きな造りだ。二階建てで、屋根は赤く、壁は生クリームのように白い。何となく、豪勢なクリスマスケーキを連想させるので、嫌な感じがした。
近寄ってみると、誰もいないのかと思うほど静かだ。まあ、こちらとしてはその方が助かる。
腰くらいの高さの柵を乗り越え、敷地内におり立った。
一応、通りを見渡してみる。
よし、誰もいない。
そして、深呼吸をした後、前を睨んだ。
この家から、金を盗んでやる。
感想
感想はありません。