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暁の剣 3

[537]  朝倉令  2006-07-08投稿


橘姉弟の父、良軒のかたき、平間元次郎とその一派が物見高いと島田から聞き及んだ結城兵庫ノ介。


きやつらをおびき出すために兵庫ノ介が取った手段とは?……




それは武者修業の間に身につけた幾多のワザを大々的に『お披露目』する、というものであった。



まことに、人を食った方法である。






高札(立て看板の事)が立ち、垂れ幕が竹矢来(竹の囲い)の三方を囲うように巡らされると、町人達や浪人者などをふくめた暇人が、たちどころに集まってきた。



その様子を満足気に眺め渡していた兵庫ノ介。



かねて用意の真っ赤なタスキ鉢巻きで身繕いをし、咳払いをしながら囲いの中央へと、おもむろに姿を現してゆく。



黒の袖なし羽織と伊賀袴(いがばかま)に、茜色のタスキと鉢巻きが実に良く映える。



なかなかに洒落ている。



兵庫ノ介は、久々に修業時代に戻った様な気分の高揚を覚えながら、口上(挨拶の事)に入った。



「さぁーて!お立ち会いお立ち会い! 本日これより皆の衆に拙者、山田虎之助が世にも珍しき技を御覧にいれまする。

ここでお見逃しになられたご仁は、末代まで悔やむ事請け合いにてござぁ〜い」




良く通る声となかなか堂に入った口上に、不安顔で見守っていた島田らも思わず吹き出していた。



「結城殿の本業は、剣術使いにあらず、香具師(やし/テキ屋の事)にござろう。 のう?」



島田竜之進は、固い表情でいた橘きょうだいに笑いかけていた。




兵庫ノ介がいかなる技を披露するのか?……






…それは次回。






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