時と空の唄12-13
「行こう、ルメール神殿に。」
ランスォールが言った。
レミスの死を悼むように外には雨が降り始めた。
先日のような激しいものではなく、優しく包み込むような雨だった。
「シーラ…リネア・トリスタを唄ってくれないか?」
ランスォールが静かに言うとシーラは黙って頷き、大きく深呼吸したあと鎮魂歌を捧げた。
震える声で唄い終えるとシーラは頬に涙を伝わせていた。
「ありがとう…」
フォーが言ってシーラは俯いたまま首を振った。
「それよりも、これからルメール神殿に行くのか?」
「ああ。行くよ。」
「なら、コイツを持って港へ行きな。
メイルって男に頼めば北まで船を出してくれる。」
フォーが何かをランスォールに投げた。
「これは?」
「行けばわかるさ。」
ランスォールは怪訝な表情を浮かべながらもフォーから受け取ったソレをポケットにしまう。
「サンキュー。」
「雨が上がり次第、早速行くか。
港はトゥール港でいいんだな?」
この山から一番近い港はトゥール港だ。
「ああ。」
三時間後、雨が止み四人は馬に跨がった。
「…シーラ、ありがとう。」
「ううん、私の方こそ。」
シーラに別れを告げ、フォーが今度はランスォールに声を掛けた。
「ランスォール。
シーラの事、頼んだからな。ちゃんと守れよ。」
「わかってるさ。」
雨が上がり、雲の隙間から薄日が差している。
少しぬかるんだ山道を二頭の馬が、四人の影が下って行った。
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