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時と空の唄12-13

[296]  花神ミライ  2009-03-07投稿

「行こう、ルメール神殿に。」
ランスォールが言った。
レミスの死を悼むように外には雨が降り始めた。
先日のような激しいものではなく、優しく包み込むような雨だった。
「シーラ…リネア・トリスタを唄ってくれないか?」
ランスォールが静かに言うとシーラは黙って頷き、大きく深呼吸したあと鎮魂歌を捧げた。
震える声で唄い終えるとシーラは頬に涙を伝わせていた。
「ありがとう…」
フォーが言ってシーラは俯いたまま首を振った。
「それよりも、これからルメール神殿に行くのか?」
「ああ。行くよ。」
「なら、コイツを持って港へ行きな。
メイルって男に頼めば北まで船を出してくれる。」
フォーが何かをランスォールに投げた。
「これは?」
「行けばわかるさ。」
ランスォールは怪訝な表情を浮かべながらもフォーから受け取ったソレをポケットにしまう。
「サンキュー。」
「雨が上がり次第、早速行くか。
港はトゥール港でいいんだな?」
この山から一番近い港はトゥール港だ。
「ああ。」


三時間後、雨が止み四人は馬に跨がった。
「…シーラ、ありがとう。」
「ううん、私の方こそ。」
シーラに別れを告げ、フォーが今度はランスォールに声を掛けた。
「ランスォール。
シーラの事、頼んだからな。ちゃんと守れよ。」
「わかってるさ。」

雨が上がり、雲の隙間から薄日が差している。
少しぬかるんだ山道を二頭の馬が、四人の影が下って行った。

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