十字路とブルースと僕と俺 24
ずっと降り続けていた雪はいつの間にかこっそりと止んでいた。目の前にはユラユラと揺らめく湯気が立ちのぼる真っ白い白米にネギがとっぷりと浮かんだ味噌汁、ネギ入りの納豆に自家製の大根のたくわん、数種類の山菜のあえものが所狭しとコタツの上に並んでいた。祖父の形見の品々は広々とした居間の片隅に一緒くたになってかたまっていた。重なりあう品々の頂点には帽子の入った四角い箱が置かれていた。
食後、玄関のガラスの向こうに見える白銀の世界をうっとりと眺めていたら祖母が縁側の中ほどからおれに手招きをした。縁側の奥にあるトイレの右側の背丈の低い扉の部屋。その木戸の前で二人は歩をとめていた。縁側のガラス戸からさしこむやわらかい日差しが二人の背にあたっていた。祖母が冷たく光る南京錠に手をかけ、ガキンッという強い音が鳴った。扉が手前にゆっくりと開いた。部屋には小さな窓が一つあるだけでとても日中とは思えないほど薄暗かった。縁側にさしこむ陽光も部屋の中までは届かなかった。背中に感じる日の光のあたたかさ。部屋の中から低く流れてくる冷たい空気。空気の質感がまったく違っていた。
祖母が部屋の中央にぶらりと垂れ下がるはだか電球に灯をともした。オレンジ色の光が部屋中を夕焼けのように染め上げていた。おれの影はおれを差し置いて、もうすでに部屋の中へ入っていた。
食後、玄関のガラスの向こうに見える白銀の世界をうっとりと眺めていたら祖母が縁側の中ほどからおれに手招きをした。縁側の奥にあるトイレの右側の背丈の低い扉の部屋。その木戸の前で二人は歩をとめていた。縁側のガラス戸からさしこむやわらかい日差しが二人の背にあたっていた。祖母が冷たく光る南京錠に手をかけ、ガキンッという強い音が鳴った。扉が手前にゆっくりと開いた。部屋には小さな窓が一つあるだけでとても日中とは思えないほど薄暗かった。縁側にさしこむ陽光も部屋の中までは届かなかった。背中に感じる日の光のあたたかさ。部屋の中から低く流れてくる冷たい空気。空気の質感がまったく違っていた。
祖母が部屋の中央にぶらりと垂れ下がるはだか電球に灯をともした。オレンジ色の光が部屋中を夕焼けのように染め上げていた。おれの影はおれを差し置いて、もうすでに部屋の中へ入っていた。
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