奈央と出会えたから。<335>
* * * * * *
中2の夏休みが終わった――
あたしの体調も良くて、
ミズホさんとバレンタインデーのチョコ作りをした日以来、
過呼吸の発作は起こしていなかった。
たぶん、
あのトキ、聖人が優しく抱きしめてくれて、
あたしの心の不安を取り除いてくれたから、
いつも不安定だった気持ちが、少し落ち着いたんだって、
そう、思うんだ。
ケド、
その代わりに、
時々、胸がキュンッッて痛くなるんだ、
あなたを想うと――
『奈央ぉ〜♪あたし先帰ってるね。今日、カレと会うんだ♪』
『うん。ユカ、超イケメンのカレと仲良くね!!』
『イヤだっっ。奈央ったら。写メ、チラッと見ただけじゃん。』
『だって、イケメンだったもん。』
そう、
ユカの好きなヒトが、
夏休み後には、カレシになっていた。
『じゃあね♪奈央♪』
『うん。また明日ね♪』
ユカのカレシは、あたし達より1コ上の中3だった。
ユカが言うには、同じ塾で運命的な出会いをしたみたい。
学校は、隣町の中学らしいんだ。
写メを見せてもらったケド、結構、カッコ良かった。
タイプ的には、聖人と正反対のタイプだった。
髪も染めていなくて、黒だったし。
あたしの周りが、すごく派手なヒト達ばかりだったから、
逆に、新鮮さを感じた。
ユカ、すごく幸せそうな顔してた。
よかった。
『奈央。何してんのよ?!帰るぞ。』
『うんっっ。待って、今行くっっ。』
そして、
あたしも大好きなあなたの元へ――
『今日も手ェ冷て―のな?!』
『うん。』
『でも、冷たくて気持ちイイかも。』
『あはは。』
『マジで。』
『聖人の手は、いつも温かいね。』
『おぅ。』
『手‥大きいよね。』
『ばーか。人の手で遊ぶなッ。』
『温かい‥‥。』
これからもずっと、
ただ、
こうしていたいだけ――
ただ、
それだけ――
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