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逃避

[443]  ケィ。  2009-03-19投稿
助けて下さい。
僕らは追われているのです。

駆ける度、小さな針が幾つも僕らの踵に刺さって、今にも足が止まってしまいそうです。

逃げ切れない。
逃げ切れない。
助けて下さい。

地に足を着ける度、針は深く突き刺さります。
針の先が肉を貫き、骨をうがつ感触が、怖気と共に神経を這い、僕の脳に伝わります。

足を止めてはいけない。立ち止まれば二度と何処にも辿り着けない。

嫌だ、嫌だ、もう走りたくない。

助けて下さい。
奴らは周到に罠を張って、僕らの邪魔をする。

針が抜けない。
小さな針はすっかり僕の肉に埋まってしまって、もう誰にもわからない。
痛い。

針を出すために、必要なものは?
トゲ抜き?
それとも、ナイフで肉を切り裂いてえぐり出す?

だけど僕らには何もない。
針は埋まったまま、何より、走らなければ。

助けて。
僕らは追われている。
僕らの足跡は赤く、鉄臭い。

小さな針の痛みは、小さな痛み?
そう。
きっと大した痛みなんかじゃない。
チクチクと、突き刺さるだけ。
だからまだ走れる。
まだ…走れる?

走らなければ。
僕らは追われている。針はもう抜けない。
チクチクと。
ヂクヂクと。
痛む。

でも大丈夫。
まだ大丈夫。
針が血流に乗って心臓へ達しない限りは。
たとえ傷口が膿んでザクロの様にただれていても、大丈夫。

速く。
速く。
走らなければ。

奴らが追ってくる。

奴らが追ってくる。

奴らが追ってくる。…

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