子供のセカイ。
「それ」がやって来たことは、二階から聞こえてきた悲鳴ですぐにわかった。
美香は風呂上がりで、ちょうどパジャマに着替え終えた所だった。
天井から聞こえる妹の悲鳴、何かが這いずり回る物音。
「また、あいつらだ!」
思わず舌打ちすると、美香は洗面所を飛び出した。
「あら、どうしたの?」
階段の所で、お母さんがびっくりしてこっちを見ている。その脇には、獰猛な目つきをした一匹のライオン。
美香は引っつかんできたドライヤーを一振りして剣に変えると、ライオンを一刀両断した。ライオンは形を崩してゆらゆらと消える。
「まあ、今度は何の遊び?この前は忍者だったけど、今日は武士なの?」
和やかに聞いてくるお母さんにちょっと頷いてから、美香は階段を駆け上がった。
妹と共同で使っている子供部屋に殺到すると、ドアの向こうでは二段ベッドの脇でへたりこんだ舞子が、ゆっくりとこちらを振り返った。
「お、お姉ちゃん…!」
舞子に近づくことはできなかった。とぐろを巻いた大蛇が、舞子をその中に閉じ込めている。
ぬらぬらと光るハ虫類の身体、赤く光る瞳にゾッとしながらも、美香は剣を構え、ジリジリと蛇に近づく。
蛇はしゅうしゅうと威嚇の音を出すが、美香は怯まなかった。
「やあっ!」
掛け声と共に大蛇に斬りかかると、大蛇も同時に鎌首をもたげて美香に襲いかかってきた。
大蛇の牙が美香の二の腕をかすめるが、美香の剣はしっかりと大蛇の脳天に突き刺さった。
しゃああ!と恐ろしい声を放つと、大蛇は先ほどのライオンと同じように揺らめいて消えた。
美香の二の腕から、ポタポタと血の滴が落ちた。
「お姉ちゃあん!!」
わあっと泣きながら舞子がすがりついてくる。美香は舞子を傷ついていない方の手で抱きしめ、ぽんぽんと背中を叩いてやった。
しかし舞子が落ち着くと、美香は妹を厳しい目つきで睨んだ。
「また扉を開いたのね。」
「だ、だって…!」
「あなたは他の子とは違うから、簡単に“子供のセカイ”とつながっちゃいけないって、何度言ったらわかるの!?」
舞子の目がみるみる潤み出して、本格的に泣き始めた。階下からお母さんの声が掛かる。
「どうしたのー?またケンカ?」
「お母さあん!!」
舞子は下へ駆け降りて行った。美香は小さくため息をついた。
これは“子供のセカイ”の物語――。
美香は風呂上がりで、ちょうどパジャマに着替え終えた所だった。
天井から聞こえる妹の悲鳴、何かが這いずり回る物音。
「また、あいつらだ!」
思わず舌打ちすると、美香は洗面所を飛び出した。
「あら、どうしたの?」
階段の所で、お母さんがびっくりしてこっちを見ている。その脇には、獰猛な目つきをした一匹のライオン。
美香は引っつかんできたドライヤーを一振りして剣に変えると、ライオンを一刀両断した。ライオンは形を崩してゆらゆらと消える。
「まあ、今度は何の遊び?この前は忍者だったけど、今日は武士なの?」
和やかに聞いてくるお母さんにちょっと頷いてから、美香は階段を駆け上がった。
妹と共同で使っている子供部屋に殺到すると、ドアの向こうでは二段ベッドの脇でへたりこんだ舞子が、ゆっくりとこちらを振り返った。
「お、お姉ちゃん…!」
舞子に近づくことはできなかった。とぐろを巻いた大蛇が、舞子をその中に閉じ込めている。
ぬらぬらと光るハ虫類の身体、赤く光る瞳にゾッとしながらも、美香は剣を構え、ジリジリと蛇に近づく。
蛇はしゅうしゅうと威嚇の音を出すが、美香は怯まなかった。
「やあっ!」
掛け声と共に大蛇に斬りかかると、大蛇も同時に鎌首をもたげて美香に襲いかかってきた。
大蛇の牙が美香の二の腕をかすめるが、美香の剣はしっかりと大蛇の脳天に突き刺さった。
しゃああ!と恐ろしい声を放つと、大蛇は先ほどのライオンと同じように揺らめいて消えた。
美香の二の腕から、ポタポタと血の滴が落ちた。
「お姉ちゃあん!!」
わあっと泣きながら舞子がすがりついてくる。美香は舞子を傷ついていない方の手で抱きしめ、ぽんぽんと背中を叩いてやった。
しかし舞子が落ち着くと、美香は妹を厳しい目つきで睨んだ。
「また扉を開いたのね。」
「だ、だって…!」
「あなたは他の子とは違うから、簡単に“子供のセカイ”とつながっちゃいけないって、何度言ったらわかるの!?」
舞子の目がみるみる潤み出して、本格的に泣き始めた。階下からお母さんの声が掛かる。
「どうしたのー?またケンカ?」
「お母さあん!!」
舞子は下へ駆け降りて行った。美香は小さくため息をついた。
これは“子供のセカイ”の物語――。
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