子供のセカイ。2
お姉ちゃんはなんにもわかってないんだ。
舞子は毛布の中で小さく呟いた。
薄暗い部屋。窓からカーテンを透かして、街灯の光がぼんやりと入ってくる。
美香は上のベッドで眠っていた。規則正しい寝息が聞こえる。美香は寝つきがいい。だが舞子は夜眠れない。
いつだってそうだ。なんだって器用にこなして誉められるのはいつも美香の方。ドジな舞子は可愛がられはするが、決して誰かに頼られることはない。
「……。」
わたしの才能は、他の子達とは違う“子供のセカイ”を開けるということだけなのに――。
舞子は思った。
きっとお姉ちゃんは羨ましいんだ。だからわたしを止めようとするんだわ。自分より一つでも秀でている部分がわたしにある事が許せないから……。
舞子は闇の中でくつくつと笑った。そう思うと何だか楽しくなった。そうだ、きっとそう。お姉ちゃんはわたしが羨ましいんだ…!
舞子は目を閉じた。想像する。うんと恐ろしい世界を。その中で自分を探して放浪する、姉の滑稽な姿を。
その時、舞子に語りかけてきた声があった。
(舞子……。)
(だれ?)
(僕は、覇王だ。)
(ハオウ……?)
(舞子、君の力が必要だ。早くこっちに来てくれないか。)
舞子は上を睨みつけた。
(ダメよ、きっとお姉ちゃんに邪魔されちゃうわ。)
(平気さ。僕が隙をつく。その間に君は、)
(ええ。)
(舞子、僕だけを信じて。僕だけは君の味方だ。君の力が必要なんだ!)
必要とされている。わたしが。わたしだけが!
舞子はくすりと笑みをこぼした。
もう少しだけその謎の声とおしゃべりして、その日は眠った。舞子はわくわくしてきた。これで、お姉ちゃんの束縛から逃れることができる。
舞子は覇王と共に、“子供のセカイ”の覇者になるのだ。
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