夢幻のユキ?
私は【幻】を見る。
物心つく頃には見えていた。
それが何か分からないけど、自分の中で【幻】とあだ名をつけた。
他人には見えないらしい。
中学に入ってからは滅多に見えなくなったけど、夜は見えやすくて早く家に帰るようにしてる。
身よりの無い自分は一人暮らしだから、帰っても独り。
だから自然と下校時は夕方まで、入り組んだ街を探検する癖がついた。
友達も何人か出来たけど、家族の温かな話になるとそれ以上深く付き合えないようになってしまう。
ーだから。
だから、何もとらわれずに私と接してくれたこの男が、なんだか嬉しくなった。
例え【幻】でも。
男は黙って桜を眺め考えていた。
初めて見る横顔は綺麗な顔だった。
空はもう夕闇に染まっていた。
「俺と一緒に来てくれないか。会ってすぐ言うつもりはなかったが、今は1から説明している時間が無い」
「どういうこと…?」
由季が訳わからずに聞き返すと、急に辺りの灯りが消え、暗闇の中にキツネに似た顔の女が現れた。足音を立てずに近づいてくる。
「何?なんなの?」
「…狐女め。匂いを嗅ぎつけたな」
男は私を後ろに引っ張って身構えた。
「走れ!ここは俺に任せろ!」
私は走り出した。しかし暗闇で先が見えない。ふと振り返るとさっきとは違う、鳥のお面を被った 奇妙な人が、私の長い髪の毛に触れていた。髪に絡むガリガリの指がゾッとする。
追い払おうとかばんを振り回しても止めようとしない。私はその場に倒れ込んでしまった。
「…っ!やだ!やめてよっ…!」
恐怖で小声しか出ない。
すると突然、目の前で奇声を上げて指から泡のように消え、後ろにさっきの男が剣を片付けて立っていた。
「すまん、大丈夫か?」
腰を抜かした私に手を差し出して、心配そうに見つめてくる。
「ははっ、足に力入らない…今日は変な日だね、ホント」
貸してくれた男の手は温かくて優しくて、見た目以上に力があってドキッした。
物心つく頃には見えていた。
それが何か分からないけど、自分の中で【幻】とあだ名をつけた。
他人には見えないらしい。
中学に入ってからは滅多に見えなくなったけど、夜は見えやすくて早く家に帰るようにしてる。
身よりの無い自分は一人暮らしだから、帰っても独り。
だから自然と下校時は夕方まで、入り組んだ街を探検する癖がついた。
友達も何人か出来たけど、家族の温かな話になるとそれ以上深く付き合えないようになってしまう。
ーだから。
だから、何もとらわれずに私と接してくれたこの男が、なんだか嬉しくなった。
例え【幻】でも。
男は黙って桜を眺め考えていた。
初めて見る横顔は綺麗な顔だった。
空はもう夕闇に染まっていた。
「俺と一緒に来てくれないか。会ってすぐ言うつもりはなかったが、今は1から説明している時間が無い」
「どういうこと…?」
由季が訳わからずに聞き返すと、急に辺りの灯りが消え、暗闇の中にキツネに似た顔の女が現れた。足音を立てずに近づいてくる。
「何?なんなの?」
「…狐女め。匂いを嗅ぎつけたな」
男は私を後ろに引っ張って身構えた。
「走れ!ここは俺に任せろ!」
私は走り出した。しかし暗闇で先が見えない。ふと振り返るとさっきとは違う、鳥のお面を被った 奇妙な人が、私の長い髪の毛に触れていた。髪に絡むガリガリの指がゾッとする。
追い払おうとかばんを振り回しても止めようとしない。私はその場に倒れ込んでしまった。
「…っ!やだ!やめてよっ…!」
恐怖で小声しか出ない。
すると突然、目の前で奇声を上げて指から泡のように消え、後ろにさっきの男が剣を片付けて立っていた。
「すまん、大丈夫か?」
腰を抜かした私に手を差し出して、心配そうに見つめてくる。
「ははっ、足に力入らない…今日は変な日だね、ホント」
貸してくれた男の手は温かくて優しくて、見た目以上に力があってドキッした。
感想
感想はありません。