あしたなんていらないから?
『失礼なひと。』
スカートを気にすることなく足をぷらぷらさせながら、
幽霊かと思われた女の子は、僕をみて笑った。
『風邪ひいたでしょ。』
『へっ…?な、なんで…』
『だって鼻水出てるもん。』
『あっ!うわ!』
急いで鼻をふく僕をみて、
クスクスと笑う彼女が、なんだかすごく肌が白いことに気が付いた。
ぐりっとした大きな黒目に、
サラサラと風になびく髪。
光にあたると茶色くなる。
『…………なぁに?』
『えっ!』
みとれてしまった。
しばらく微妙な沈黙が続いた。
なんだかそれがもどかしくて、僕はとっさに自己紹介をした。
『ぼ…っぼく、相田文也。
作文の「文」に、ひらがなの「せ」に似てる「也」って書いて、文也。高校2年A組1番。』
『…変な自己紹介。』
女の子は少し困った顔をした。
『あたしもそれ言わなきゃダメ?』
『別に…言いたくないなら。』
『じゃぁ、言わない。』
そう言うと、ニコッと笑った。
さっきクスクス笑ってたのとは違って
なんだか
泣いているようにも見えた気がした。
『出席番号1番が毎回遅刻したら、授業の度に出席確認がつまずくね。』
『ははは…』
またクスクスと笑って、足をぷらぷらさせながら僕を見る。
ぱ…ぱんつミエテマスケド……。
言って良い事がありそうな予感はまったくしなかったから
僕は黙って自分の手をいじりながら下を向いた。
また、微妙な沈黙。
『あ、あのさ』
何かはなさなきゃ、と思って一歩歩み寄ったその時。
『ブンーーーーーーッ!』
耳をつんざくような声で、僕の名前が叫ばれた。
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