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あしたなんていらないから?

[387]  あめの  2006-07-09投稿



『失礼なひと。』



スカートを気にすることなく足をぷらぷらさせながら、
幽霊かと思われた女の子は、僕をみて笑った。




『風邪ひいたでしょ。』
『へっ…?な、なんで…』
『だって鼻水出てるもん。』
『あっ!うわ!』


急いで鼻をふく僕をみて、
クスクスと笑う彼女が、なんだかすごく肌が白いことに気が付いた。

ぐりっとした大きな黒目に、
サラサラと風になびく髪。
光にあたると茶色くなる。





『…………なぁに?』
『えっ!』



みとれてしまった。



しばらく微妙な沈黙が続いた。


なんだかそれがもどかしくて、僕はとっさに自己紹介をした。



『ぼ…っぼく、相田文也。
作文の「文」に、ひらがなの「せ」に似てる「也」って書いて、文也。高校2年A組1番。』

『…変な自己紹介。』


女の子は少し困った顔をした。

『あたしもそれ言わなきゃダメ?』

『別に…言いたくないなら。』
『じゃぁ、言わない。』



そう言うと、ニコッと笑った。
さっきクスクス笑ってたのとは違って
なんだか

泣いているようにも見えた気がした。




『出席番号1番が毎回遅刻したら、授業の度に出席確認がつまずくね。』
『ははは…』


またクスクスと笑って、足をぷらぷらさせながら僕を見る。





ぱ…ぱんつミエテマスケド……。



言って良い事がありそうな予感はまったくしなかったから
僕は黙って自分の手をいじりながら下を向いた。


また、微妙な沈黙。




『あ、あのさ』



何かはなさなきゃ、と思って一歩歩み寄ったその時。





『ブンーーーーーーッ!』



耳をつんざくような声で、僕の名前が叫ばれた。

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