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暁の剣 6

[565]  朝倉令  2006-07-10投稿


虚空から河西陣十郎目がけ、悪鬼の形相で斬撃を繰り出す山田虎之助、こと結城兵庫ノ介。



着流しの浪人、河西は驚愕に目をひん剥いたきり、カチンコチンに硬直していた。



「キエエェェーイッ!!」


烈帛の気合いを伴い、真っ向から振り下ろされた陣太刀は、河西の体スレスレを刃風と共にかすめ去っていく。



「デヤアアアァーッ!!」


掛け声も凄まじく、地に降り立つやいなや全身をつむじ風の様に旋回させ、縦横無尽に陣太刀を奮う兵庫ノ介。


その気合いは、聴くものの心胆を寒からしめるものであった。



まさに、戦場の雄叫び(おたけび)そのものである。


『物干しざおもかくや』という程の長大な刀身が、銀光の尾を引きながら、生きものの如く自在に宙を走る。





やがて、動きを止めた兵庫ノ介は、伍助の差し出す鞘(さや)に陣太刀を静かに収めていく。




ややあって、河西の体からハラリハラリと着物の細片が四方に散り、風に吹かれて飛んでいった。



「やややっ!越中(えっちゅう)のお人にござったかや。
これは重ね重ねご無礼をば致した」



越中名物の〈赤ふんどし〉一丁にされた浪人、河西陣十郎は、平身低頭して詫びる兵庫ノ介をボーッと眺めている。



その直後、爆発的に起こった拍手喝采にもまるで無反応であった。




(ちと、お遊びが過ぎ申し たな……)



平謝りしながら、兵庫ノ介は義理の兄、立川右京と暴れ回っていた若かりし頃のおのれを思い浮かべ、苦笑していた。



悪ノリするのも、数年振りの事である。







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