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箱舟3

[562]  2009-04-01投稿
(ここは……一体………?)
深川はゆっくりと起き上がる。が、起き上がりきる前に一瞬体がフラついた。もう一回、きちんと上体を起こし、辺りを見回す。
船の上に深川はいた。(なんで…俺は…こんな所に………。)深川は今までの事を必死に思い出す。(確か俺は殺人現場にいた筈だ。…そこで、俺は………殺された…。)あらためて深川は周りを見回す。(ここは船の上だ…。なんで俺はこんな場所に?)そう思いながら辺りを見回していると、深川はある事に気付く。(これ…水じゃあないな……。)

深川は最初に辺りを見回した時には水と見間違えたが、よく船から下を見ると水ではない事に気がついた。(何だろう…コレ……。)思わず手に取り確認しようとする。だが、水と見間違えたそれに触れる寸前に「やめろ!!」という声が聞こえた。深川はその声に気付き、手をとめた。

見ると長髪で長身の男がいた。男は黒のコートに黒のジーパン。長い髪は腰まで延びており、色は赤く染まっている。年齢は30ぐらいだ。(誰だ?)深川は辺りを見回した時には誰もいなかった事を記憶の中で確認する。男は続けて、「今のお前がそれに触れたら死ぬぞ。」と言い放った。深川の頭の中は疑問でいっぱいだった。「待ってくれ!死ぬって…俺は生きてるのか!?」「まぁ落ち着け。ゆっくり話した方が頭に入り易いだろ?」

「………じゃあ、俺は生きてるのか?」深川が尋ねる。「いいや。君はもう死んでいる。」男はあくまでも冷静に受け答える。「じゃあ何で俺は船の上にいるんだ?」「俺が運んできた。」「そういう事じゃない!なんで俺は死んでいるのにこの船の上で生きているのかと聞いているんだ!」深川は興奮してきた。「落ち着けと言っただろう!!」男の声がそれを制する。「………ッ!」深川は男の声にただならぬ恐怖を感じた。(なんだ……?この威圧感は)「……それで?聞きたい事があるのだろう?」「あ、ああ。さっきあんた、《君はもう死んでいる》って言っただろう?じゃあ死んでいるはずの俺は何でこうして生きている時と全く変わらない行動が出来るんだ?」男は待ってましたと言わんばかりの態度で話し始めた。「いい質問だ。いいだろう。答えてやる。」

深川はじっと、静かに、男の話しを聞きはじめた。

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