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僕らの将棋

[548]  hiro  2009-04-02投稿
どんな戦法を使ってでも、君を奪ってやる!
僕はそう心に決めていた。
だけど君はまるで
「王」様だ。
近づくことすら難しい。
だから僕は負けないように、君に勝てるように頭を使ったんだ。
ある時は「香車」のように
真っ直ぐな気持ちを君にぶつけて、
決して後戻りなどしない。
ある時は「桂馬」のように大股でスキップしながら
浮かれた気分で君に近づいた。
あれは失敗だったな。
ある時は「飛車」のように
遠い場所から君の様子を窺って、チャンスを探していた。
君に近づいたり君から離れたり…。
ある時は「角行」のように
君の僅かな隙を狙って、斜めから一気に突き抜けた。
いつも「歩兵」のように1歩1歩確実に前に進んで、
「金将」みたいに強く成れると信じてきた。
君を守る強さが欲しかったんだ。
時には何かを犠牲にして、何かを失くした。
それでも僕はずっと
今まで君と戦ってきた。
そして今、全ての準備が整った。
君はもう逃げられない。
「王将」すなわち
「君」は僕の目の前。
これでやっと勝てた。
僕は1歩前に踏み出して、
「王手」のかわりにこう言うのだ。
「君が好き」
それから君は「参りました」のかわりにこう言うだろう。
「あなたの気持ちに負けたわ」

こうして君は、
僕の持ち駒になった。

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