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航宙機動部隊前史後編・41

[558]  まっかつ  2009-04-03投稿
そのドクター=キマリが、大国解体のどさくさを利用して、今や万を越す最終兵器の管制システムを掌中に収め、更に同じ代物を年間一千基以上製造出来る生産設備をも所有しているのだ。
彼の計画は、表面上の頓挫とは裏腹に実現に王手をかけていた。

ドクタ=キマリ=ジュニアは、人類と銀河の滅亡《初代キマリの考えからしたら真の進化のプロセス》を防ぐ為、父に闘いを挑んだ。
それは、熾烈を極めた頭脳戦となった。
キマリは既に、再建なったネット集合体の全てに渡って最終兵器管制システムの暗号を分散さしてしまっていた。
つまり、最低でも八百億人は利用する超巨大情報通信網全てを解き明かさねば、手が付けられない状態となっていたのだ。
ジュニア=人類総会陣営側が例え総力を挙げたとしても、解読に要する時間は二億年はかかる―絶望的な予測が試算された。
しかも、ドクタ=キマリは、人類に向かって宇宙の進化プロセスの開始―最終兵器全ての発動を宣告した。
その日時は、銀河元号一六一九年第一期九日(修正太陽暦一月九日)―\r
ジュニア達にはもう一年も残されていなかった。

だが、ジュニア達も諦めはしなかった。
彼は独自の研究を密かに重ねていた―それは、巨大なエネルギーを知性に変換する《知在系》と言うアイデアだった。
恒星を陽のエネルギー・ブラックホールを陰のエネルギーと定義して、何等かの方法で両者を繋げ、一定の調和を保たせ、絶妙なバランスを自力で取らせるまでに持って行けば、そこにそれまでにない高度な知性が生ずる―それを利用して、キマリの造り上げた壮大な罠を打ち破ろうとしたのだ。

しかし、これ以上の具体的プロセスは歴史の闇に葬り去られてしまった。
何故なら、この人類のレベルを遥かに超越した技術は、善用悪用何て悠長に聞こえる程、危険極まり無い―人類総会も宗教界もそう考えて、あらゆる記録は抹消されてしまったからだ。
それ所か、本来なら人類の救世主として讃えられるべき研究の主要メンバー達の名前すら明らかになってはいない。
明らかなのは、ジュニアの次男・ドクタ=サゴデンが実質的な責任者を努め、《知在系恒星頭脳》完成の僅か三年後、原因不明の病で急死を遂げていると言う事実である。
一説には人類総会が殺したとすら囁かれている。

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