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愛を知りたい君へ 5

[239]  海菜香  2009-04-04投稿

「ごめん。待たせた?」
「ううん。待ってない。」
彼が優しく笑ってくれるのが、堪らなく嬉しい。


「それじゃ」
そう言って彼は教室に入った。
私も自分の教室に入り、席に着いた。
「サヤカ。」
後ろから話かけられ振り向くとカミヤ君が立っていた。
「何?」
微笑みながら聞くと本を差し出した。
「…昨日の本。」
「え?もう読んじゃったの?」
「あぁ」
彼の手から本を取り、ありがとう、と答えた。
それだけ聞くとカミヤ君はすぐに自分の席に戻っていった。


休み時間
暇があったので小説を読んでみることにした。
何分かたちページをめくると栞が落ちた。
「あ。」
拾い上げると、そこには字が書いてある。
『サヤカ、君に幸せになって欲しい。いつでも相談にのる。』
カミヤ君の字だった。
素直に嬉しかった。
私になんかにも優しく接してくれる人がいるんだ。
心からカミヤ君に感謝した。
「おぃ。サヤカ」
いきなり声がして驚いた、が冷静に栞を本に挟んだ。
「コウタ。」
「なぁ、少し一瞬にいないか?」
コウタは楽しげに笑っている。
「うん。」




私には、やはりコウタしか愛しない。
わかっていた。
彼が病気だってことも、彼が最近やけに明るいことも。
だから不思議じゃなかった。
彼が死んでしまうことが…

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