山のカミサマ2
初めての山への道すがら、僕は終始浮かれ
「熊、熊いるかな!?」
だとか、
「宝物とか埋まってないかな!?」
などと、たわいもない空想に酔いしれていた。
じいちゃんはニコニコしながらたまに相づちをうって、ほれ急ぐぞ、と僕を引っ張ってヅンヅン山奥に向かって行った。
どれだけあるいただろうか?
すっかり辺りは木ばかりになり、道というか完全な獣道を僕らは歩いていた。
時間は二時ぐらいだったと思う。
じいちゃんとおしゃべりしながら僕はおやつを食べていた。
興奮していたのかぜんぜん疲れは感じていなかった。
そろそろてっぺんに着くぞ、じいちゃんがそう言った時、近くの茂みが突然揺れた。
「ねっ!何?」
じいちゃんは喋らない。
「ねっ!熊?」
やはりじいちゃんは喋らない。
只ならぬ雰囲気に僕はじいちゃんの尻にしがみつき、じっと茂みを見つめた。
じいちゃんがゆっくり僕を抱き寄せる。
「こっちくんな!」
じいちゃんが声を張り上げた。
さっきからナタから手を離そうとしない。
「こっちくんなてぇ!」
茂みの揺れはゆっくり僕らのほうに近づいている。
突然僕の目の前の天地がひっくり返った。
じいちゃんが僕引っ張り上げ走り出したからだ。
すでに七十に差し掛かろうという老人とは思えないような猛スピード!
同時に茂みの何かが飛び出してきた!
気が動転した僕にもその時ハッキリとその何か姿が見えた。
人ではない。
猿にしては大きすぎる。
あまりの怖さに僕はただじいちゃんにしがみつき、堅く目を閉じた。
荒いじいちゃんの息遣い。
ガンガンと伝わる斜面を駆け下りる振動。
何かのうなり声。
どれほど時間がたったのだろう?
苦しそうに息をつくじいちゃん。
そっと目を開けると見慣れた村の風景が広がっている。
「あれ何?なんなの?おばけ?」
息を整えるじいちゃん。
「あれはな、ここらの山のカミサマだ。」
あれから十数年、じいちゃんは静かに息を引き取った。
僕も大人になり忙しく毎日を過ごしている。
多くのことを経験し様々なことを学んだが、じいちゃんが亡くなった今、あの日のこと説明できる手立てはない。
もちろん、あれ以来山にには入っていない。
「熊、熊いるかな!?」
だとか、
「宝物とか埋まってないかな!?」
などと、たわいもない空想に酔いしれていた。
じいちゃんはニコニコしながらたまに相づちをうって、ほれ急ぐぞ、と僕を引っ張ってヅンヅン山奥に向かって行った。
どれだけあるいただろうか?
すっかり辺りは木ばかりになり、道というか完全な獣道を僕らは歩いていた。
時間は二時ぐらいだったと思う。
じいちゃんとおしゃべりしながら僕はおやつを食べていた。
興奮していたのかぜんぜん疲れは感じていなかった。
そろそろてっぺんに着くぞ、じいちゃんがそう言った時、近くの茂みが突然揺れた。
「ねっ!何?」
じいちゃんは喋らない。
「ねっ!熊?」
やはりじいちゃんは喋らない。
只ならぬ雰囲気に僕はじいちゃんの尻にしがみつき、じっと茂みを見つめた。
じいちゃんがゆっくり僕を抱き寄せる。
「こっちくんな!」
じいちゃんが声を張り上げた。
さっきからナタから手を離そうとしない。
「こっちくんなてぇ!」
茂みの揺れはゆっくり僕らのほうに近づいている。
突然僕の目の前の天地がひっくり返った。
じいちゃんが僕引っ張り上げ走り出したからだ。
すでに七十に差し掛かろうという老人とは思えないような猛スピード!
同時に茂みの何かが飛び出してきた!
気が動転した僕にもその時ハッキリとその何か姿が見えた。
人ではない。
猿にしては大きすぎる。
あまりの怖さに僕はただじいちゃんにしがみつき、堅く目を閉じた。
荒いじいちゃんの息遣い。
ガンガンと伝わる斜面を駆け下りる振動。
何かのうなり声。
どれほど時間がたったのだろう?
苦しそうに息をつくじいちゃん。
そっと目を開けると見慣れた村の風景が広がっている。
「あれ何?なんなの?おばけ?」
息を整えるじいちゃん。
「あれはな、ここらの山のカミサマだ。」
あれから十数年、じいちゃんは静かに息を引き取った。
僕も大人になり忙しく毎日を過ごしている。
多くのことを経験し様々なことを学んだが、じいちゃんが亡くなった今、あの日のこと説明できる手立てはない。
もちろん、あれ以来山にには入っていない。
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