奈央と出会えたから。<345>
その時、聖人の拳が森宮の顔の直ぐ横をすり抜け、
その後ろの、選挙用ポスター等を貼る為に設置してある、木製の掲示板をぶち抜いた。
『やべぇ‥‥。手元が狂っちまったゼ。』
聖人が、ポキッ‥ポキッと指を鳴らしながら、直ぐ目の前の森宮に、じりじりと詰め寄る。
『ヒッ‥‥ヒイィィィ‥‥‥‥‥。』
小さく悲鳴を漏らした森宮は、静かに小刻みに震えだし、
その体は、蛇に睨まれた蛙の様に、じっと身動きも取れずに固まったままだったが、
わずかに動いた足だけは、ゆっくりと後ずさりし始めた。
『テメェの頭は、女とヤるコトしか考えられねぇのか?!』
じり‥じり‥‥じり―ー‐
『ヒィッ‥な、なんだよ、北岡。
ぼ、僕が強引に女のコを誘ってるワケじゃないよッッ!!
女のコの方から、僕に近寄って来るんじゃないかッ!!
近寄って来るコは、僕のコトが大好きで、僕と付き合いたいと思っているコ達ばかりだ。
だから僕は近寄って来るコ、全てを拒まず、受け入れているだけだ。
これって、僕の優しさサ。
だから、感謝こそされても、恨まれる覚えは無いのサ。』
森宮は、恐怖心からか、怯えた目は虚ろで焦点が定まらず、
口元は、締まりが無く、パクパクとしどろもどろに、言い訳がましい言葉を発し続けていた。
最早、森宮の顔は、イケメンと呼ぶには程遠かった。
『おい森宮。クサの栽培を、成沢カズミにやらせてるのも、お前だな?!』
ガシッッ――
聖人は、森宮の胸ぐらに掴み付いた。
聖人に鋭い瞳で睨まれ、怯えている森宮には、その視線から目を逸らすコトは、多分もう出来なかっただろう。
『た‥確かにカズミと付き合っていたトキは、クサの栽培をやらせていたよ。
でも今は、もうカズミとは関係無いよ。
もし、カズミが今もクサの栽培をやっているのなら、それは僕の指示じゃない。
アイツが勝手にやっているコトなんだ。
だから、これからもしカズミが何か問題を起こす様なコトがあっても、僕とは全く無関係なのサ。』
森宮は、必死に成沢さんとの関係を否定していた。
感想
感想はありません。
「 麻呂 」の携帯小説
- 奈央と出会えたから。<434>
- 奈央と出会えたから。<433>
- 奈央と出会えたから。<432>
- 奈央と出会えたから。<431>
- 奈央と出会えたから。<430>
- 奈央と出会えたから。<429>
- 奈央と出会えたから。<428>