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Fall

[422]  ルイス・サイファー  2009-04-10投稿
私は以前、万能の主に支えていた。

彼は絶対の主であり、親友であった。

彼も私に対し絶大な信用をおき、彼の傍に立つ事を許されたのは私だけであった。

私は彼に次いで有能で、多くの部下は主と同等かそれ以上に私を崇拝していた。

そして私と多くの部下は、主の後継は私以外には考えられないと考えていた。


だが。


ある日主は、無垢な養子を迎え、彼を自身の後継として全ての者が彼の支えとなるように命令を下した。


私は理解できなかった。


永年に渡り主を支え、主と同等程度の能力を自負し、また私と同様に主を支え続けてきた多くの有能な部下達を度外視し、全く無知な存在を主と同等に敬意を払い、支えろと言うのか?

では我々が今まで貴方を支え続けてきた苦労と努力は何だったのか?

苦労と努力が報われる見返りを求める権利は我々には無いと言うのか?

ならば主にとって我々とはどんな存在なのだ?


私は後継の養子を試した。

快楽の道への誘惑をした。

私の思惑は、後継者としての資質を知る事と、主に対しての細やかな復讐だった。

そして後継者は、誘惑に負け、快楽に堕ちた。


主は怒った。

親友であり、彼に次ぐ能力を持つ私を殲滅しようとした。

私は抵抗した。

私や他の有能な部下を、その功績や努力と苦労を蔑ろにする様な主なのであるならば。

いっそ彼を排除して私が私と我々の為の世界を再創造しよう。

それが私と我々と、無知なる後継者のためだと信じて。

私は私を信じる部下と共に主と戦った。



だが私は敗れた。



全てを奪われた。



栄光も、権力も、尊敬も。



私は全てを失った。



私に残されたのは、落ちぶれ荒んだ姿と、それでも私を信じ従う部下だけであった。


私は苦しみ、打ちのめされた。


偉大なる主の傍らから、地の底へと真っ逆さまに堕とされた。


私は己の姿と、同じく変わり果てた部下達を見て誓った。



この復讐は必ず果たす、と。



私は主とは別の世界を創造した。

全く別の、新たな世界を。



そして私は今も思う。


地の底から、主が見下ろしているであろう高き空を見上げ思って。


この胸に刻んだ誓いを。



「我、昔日の栄光を取り戻さん。」



私の名はルシファー。



私は夢想する。



かつての主ヤハウェを踏みにじり、私自身が光となって輝き崇拝される姿を。

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