エンブレム?
それは、月の綺麗な夜のことだった。
私は、いつものように人が掃けた喫茶店のカウンターで、読書に耽っていた。
この時間ともなると客もあまり来店しないので閉店までの残り二時間はいつも私のその日唯一の自由時間となる。
だが、その日だけは違った。
カランカランと来客を告げるベルが鳴り、反射的にイラッシャイマセと言いながらそちらを見ると、そこには暗く、ヤツレタ表情を浮かべた女性が一人立っていた。
女性は無言でカウンター席に着くとか細い声で「コーヒーを」と言った。
私は、分かりましたと言って指定されたブレンドを入れながら彼女をチラリと見た。
歳は二十代前半だろう。
長い髪に、上から下まで真っ黒な服に包まれた少し痩せ気味な身体。
顔は、先述した通り酷くやつれていて少しのことで折れてしまうのではないかと心配するほどに暗い影をおとしていた。
私は普段、客に自分から話し掛けることは無いのだが、その消えて無くなりそうな存在感にあてられてか何故か「どちらから入らしたんですか」と話し掛けていた。
彼女はそこで初めて顔をあげた。
血の気の無い何処と無く相手を不安にさせる、そんな目を持っていた。
私は、いつものように人が掃けた喫茶店のカウンターで、読書に耽っていた。
この時間ともなると客もあまり来店しないので閉店までの残り二時間はいつも私のその日唯一の自由時間となる。
だが、その日だけは違った。
カランカランと来客を告げるベルが鳴り、反射的にイラッシャイマセと言いながらそちらを見ると、そこには暗く、ヤツレタ表情を浮かべた女性が一人立っていた。
女性は無言でカウンター席に着くとか細い声で「コーヒーを」と言った。
私は、分かりましたと言って指定されたブレンドを入れながら彼女をチラリと見た。
歳は二十代前半だろう。
長い髪に、上から下まで真っ黒な服に包まれた少し痩せ気味な身体。
顔は、先述した通り酷くやつれていて少しのことで折れてしまうのではないかと心配するほどに暗い影をおとしていた。
私は普段、客に自分から話し掛けることは無いのだが、その消えて無くなりそうな存在感にあてられてか何故か「どちらから入らしたんですか」と話し掛けていた。
彼女はそこで初めて顔をあげた。
血の気の無い何処と無く相手を不安にさせる、そんな目を持っていた。
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